今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2024年11月「 八木澤 高明」さん

八木澤 高明(やぎさわ・たかあき)さん

1972年横浜市生まれ。ノンフィクション作家。世間が目を向けない人間を対象に日本国内、世界各地を取材。『マオキッズ 毛沢東の子どもたちを巡る旅』で第19回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。著書に『黄金町マリア』『日本殺人巡礼』(集英社文庫)『忘れられた日本史の現場を歩く』(辰巳出版)などがある。

『忘れ去られた人たち。現場を歩くとそのかなしみが伝わってくる』

無名の人たちの味わったかなしみにスポットを当てる

中川:
八木澤さんのご著書『忘れられた日本史の現場を歩く』を興味深く拝読しました。 拝み屋さんの話から始まって、からゆきさん、蝦えみ夷しの英雄、潜伏キリシタン、平家の落人、飢饉で全滅した村など、さまざまな時代の、日本各地の学校では習わない歴史が紹介されています。 私は氣の世界に足を踏み入れて30年になりますが、氣を通していろいろな体験をするうちに、苦しい中、がんばって生きてきた、名もなきご先祖様たちに思いを向ける大切さを感じるようになりました。 無名の人たちの味わったかなしみにスポットを当てるという、八木澤さんの活動には共鳴できる部分が多く、お会いできるのを楽しみにしていました。
八木澤:
ありがとうございます。 私は小学校2年生のときに、源義経の伝記を読んで歴史に興味をもちました。その後、私が生まれ育った横浜は源氏とのかかわりが深く、義経を祀った神社もあって、親族はそこの氏子だとわかりました。はるか遠い昔の出来事だと思っていたことが、いつも見慣れた景色の中にあると知ったのは大きな衝撃でした。 大学は歴史学科に入りました。しかし、古文書とか統計といったアカデミックなアプローチに興味がもてず、現場を歩きたいという思いが高じて、大学を中退してネパールへ行きました。ネパールには何度も足を運び、反政府闘争をしているゲリラや児童労働など、日本では報道されていない現実を見て、記録に残ることが少ない出来事に関心をもつようになり、世界各地、日本国内の、歴史上あまり陽の当たらない場所や人を訪ねて歩いてきました。 ところで、さきほど会長は氣と歴史が関係あるようなお話しされましたが、それはどういうことなのでしょうか。
中川:
実は、氣を受けるといろいろな反応が出る人がいます。体が温かくなるとか揺れるといったのはよくあることで、ほかにも、感情が湧き上がってきて泣き出したり、怒り出したりする人もいます。 中には恨みとか憎しみをしゃべり出す人がいます。それも氣を受けている人自身の思いではなくて、すでに亡くなっている人だとしか考えられないようなこともたくさんあります。 たとえば、山に埋められて苦しかったとか、戦場で殺された、自分が死んだのはあいつのせいだといった話をするのです。今もつらい思いをしているのを知ってほしい、と訴えてきたりします。 そういうエネルギーを、私はマイナスの氣と呼んでいますが、マイナスの氣の影響を受けると、生きている人が病気になったり、人間関係で苦しんだりすることがあるのです。 氣を受けると、マイナスの氣も苦しみが軽くなるのでしょう。「ああ、楽になってきた」と喜びます。 そして、十分に氣を受けると、光になって行くべき場所に行くので、生きている人も苦しみから解放されたりするのです。 そうしたマイナスの氣は、つらい亡くなり方をしたご先祖様の場合が多く、まさに忘れられた存在です。歴史を知っていれば、マイナスの氣の話す恨み言から、どういう状況だったのかが想像できます。 マイナスの氣がどんなつらさを抱えていたかをわかった上で氣を受ければ、よりたくさんの氣を届けることができるようなのです。
八木澤:
マイナスの氣を追い出してしまうのではなく、彼らの苦しみを理解してあげるということですね。
中川:
マイナスの氣にはマイナスの氣になってしまった理由があります。 たとえば、貧しくて食べる物がなくて苦しんだご先祖様もいたでしょう。八木澤さんの本にも書かれていたような飢饉があったかもしれません。極度の空腹の中で心身ともに衰弱し、子どもたちを殺さなければならなかったり、年老いた親を山に捨てにいったり、まわりの人たちがバタバタ死んでいく。希望をもてと言われても難しいでしょう。「いい人生だった」とニコニコ笑いながら死んでいける人はほとんどいないのではないでしょうか。 しかし、そういう苦しい中でもがんばって生き抜いたご先祖様がいたからこそ、自分がいるわけです。マイナスの氣だからと追い出すのではなく、本当は感謝すべき存在です。そして、ご先祖様の苦労を知ることで、自分がいかにいい環境で生きているかもわかります。 マイナスの氣になったご先祖様の状況を知り、大変だったなと思えるようになると、不平不満ばかりを言っていた人が、そうじゃない、自分は恵まれているのだと気づくこともできます。不平不満が少なくなり、感謝の気持ちを言葉にすることが多くなります。 そうした気づきが、自分自身の氣を高め、ご先祖様にもたくさんの氣を届けることができて、自分もご先祖様も幸せに近づけるようになるのではないでしょうか。
八木澤:
実はネパールで不思議な体験をしました。 お医者さんもいない村で、1ヵ月ぐらい咳が止まらなくなって寝込んだことがあったんです。村の人からは『魔女に呪いをかけられているからだ』とか言われました。 ある日、祈祷師みたいな人が来て、刀を振り回してまじないをかけるんです。最後に刀の刃の先からしずくが出て、それを飲んだら、咳が止まりました。
中川:
それは良かったです(笑)。氣と関係があると思いますね。 氣のことは理屈ではなかなか説明できませんから、体験させられる人がけっこういます。私も30年前は氣のことを信じていませんでしたが、体調を悪くしたことで氣を受けることになり、すぐに元気になって氣に興味をもちました。 あの体験がなければ、こうやって氣に深くかかわることはなかったと思います。 八木澤さんの本を読んでいると、見えない力の応援があるように感じます。 取材のきっかけもそうだし、現場に行くと奇跡とも思えるような出会いがたくさんあるじゃないですか。
八木澤:
そうなんですよ。「適当に話を作って書いているんじゃないの」と言われることもあります(笑)。そんなに都合のいい出会いって嘘くさいって思うんでしょうね。でも、編集者も一緒にいたりするわけですから、捏造ならすぐにばれてしまいます。
中川:
インドに売られていった山口県岩国市のからゆきさんのお話がありましたよね。たまたま門司で読んだ郷土史の資料で情報を得て、そこに書かれていた集落を訪ねたら、最初に入った雑貨屋のご主人が「その人なら、この先の家に住んでいましたよ」とあっさりと教えてくれたってあるじゃないですか。そんなことなかなかないでしょう(笑)。まして、そのからゆきさんは明治時代の方ですからね。すぐに住んでいた家がわかるなんて奇跡ですよ。
八木澤:
実家が商店街の肉屋をやっていましたから、商店には人も情報も集まることを、感覚として知っています。 だから、取材で知らない場所を訪ねたときには、まずは米屋、床屋、クリーニング屋、酒屋といったお店に入って情報収集することにしています。 それにしても、一軒目で「知っていますよ」と言われたときはびっくりしました(笑)。 その女性は、23歳のときに岡山県の紡績工場で働いていて、ある人から清国の紡績工場で働けば日本の3倍は稼げると言われて船に乗るわけです。そしたら、香港に連れて行かれて、現地の女郎屋に売り飛ばされて、シンガポールをへて、インドのボンベイにたどり着きました。ボンベイで救助されて3年ぶりに岩国の故郷に帰ることになりました。 その間、ボンベイで現地の客との間に子どもができて出産しましたが、子どもはどこかへ売り飛ばされました。 20代で故郷へ帰ったのですが、ずっと未婚だったそうです。きっと、まわりから後ろ指さされたりして、つらい思いをしたことと思います。 貧しい村で生まれ育って、少しでもたくさん稼ごうと清国の話に乗ったばかりに、とんでもない苦難の人生になってしまったわけです。切ないですよね。
中川:
その方のお墓も探したそうですね。
八木澤:
村はずれの墓地へ行って、その方の名前を探しましたが見つかりませんでした。 海外に取材に行くときには、日本人墓地を訪ねるようにしています。インドネシアのメダンという町に行ったときに、大きな日本人の墓地があるというので出かけました。300基くらいがからゆきさんのお墓でした。みなさん、だいたい20代の若さで亡くなっています。 かつて、横浜に一大売春宿があって、タイやコロンビア、ベネズエラなど外国人の娼婦がたくさん働いていました。エイズで亡くなった人もいます。そこで働く娼婦たちを取材して『黄金町のマリア』という本にまとめたことがありましたので、海外に売られていって、故郷のことを思いながら若くして亡くなる日本人女性の話を聞くと、どうしてもお墓に手を合わせたくなるんですね。
中川:
そういう気持ちで取材されているからこそ、導かれるような出会いがあるんでしょうね。 まさに忘れ去られた人たちで、光を欲しがっていると、私は思います。そういう方々のことを本にして知らせるというのは、とても大切なお仕事です。八木澤さんもさらに氣を高めていただけると、八木澤さんが興味をもたれている方々のもとに、これまで以上にたくさんの光が行くはずです。 真氣光は、氣を高めるためのひとつの手段なので、今日は氣を受けてお帰りください。(続きはハイゲンキマガジンで・・)

東京・池袋 キープレース にて 構成/小原田泰久

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