今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2023年1月「長島 彬」さん

長島 彬(ながしま・あきら)さん

CHO研究所代表、ソーラーシェアリング推進連盟最高顧問。1943年神奈川県生まれ。東京 都立工業短期大学(現東京都立大学)を卒業後、約40年にわたり農機具の総合メーカーに勤 務。2003年定年退職後、慶應義塾大学法学部に入学、同時にCHO研究所を設立。2004 年に光飽和点の存在を知り、ソーラーシェアリングの考え方を発案。2010年には千葉県内に 実証試験場を開設し、ソーラーシェアリングの普及に務める。著書『日本を、変える、世界を変え る! 「ソーラーシェアリング」のすすめ』(リック刊) ソーラーシェアリングのすすめ

『電気を自分で作る。 ソーラーシェアリングの可能性』

上は発電、下は農地として使える ソーラーシェアリング

中川:
先日、『原発をとめた裁判長そして原発をとめる農家たち』という映画を見ました。映画の中に、原発事故で一度は農業をあきらめた福島の農家の人たちが、ソーラーシェアリングという太陽光発電で電力を自分たちで作るという場面があって、こういうシステムがあるんだと驚きました。長島先生はソーラーシェアリングの開発者で、映画でもコメントされていました。今日は、ソーラーシェアリングについてお聞きしたいと思っています
長島:
映画で紹介されていた福島のソーラーシェアリングに関しては、私は直接かかわっておりませんが、あの映画もなかなか評判が良いみたいで喜んでいます。会長のように、映画を通してソーラーシェアリングを知っていただいた方もたくさんいるでしょうしね。
中川:
ソーラーシェアリングというのは、田んぼや畑に3メートルほどの支柱を立て、その上に適度な間隔でソーラーパネルを並べて発電をするという方法です。発電をするという方法です。 従来の太陽光発電だと、山を削ったり、田畑を使えなくしてしまうので、自然エネルギーと言っても、どこか自然破壊をしているようなイメージがありました。だけど、ソーラーシェアリングだと、下は農地として使えますから、耕作放棄地を発電と農地の両方に活用できるということですよね。
長島:
太陽光発電は普及とともにいろいろ非難され始めていますが、化石燃料の使用を減らすにはどうしても必要な技術です。 従来のメガソーラーは、自然と共生する方法といいにくいのが現状です。しかし、ソーラーシェアリングにすれば、太陽光発電が大面積が必要という大きな問題点が解決できますし、私たちが生活するのに十分な電力を供給できることがわかりました。

中川:
私も映画を見て、これは期待できると感じました。そのあたりのことをじっくりとお聞きしたいと思います。
長島:
私たちは石炭や石油、天然ガス、ウランを地下からとってエネルギーを作るのが当たり前だと思ってきましたが、それは産業革命以降の約400年の技術に過ぎません。人類が火を使うようになってからおよそ50万年です。そのうちの400年ですから、ほんの一瞬です。その一瞬で地球環境をどれだけ悪化させたか。人類はあらゆる生物に対して愚かで申し訳ないことをしてきたと思います。石油で財を成してきたロックフェラー財団の後継者も、化石燃料を使う企業には投資しませんと言っているくらいですから、いよいよ人類もその愚かさに気づき始めているのではないでしょうか。 化石燃料での発電は限界ですし、原子力を推進したい経産省が出した2030年の発電コストの予測データでも、太陽光発電が一番安いことを認めました。いろいろな側面から見て、太陽光発電はもっと広がっていかないといけません。
中川:
政府は原子力発電を増やすような発言をしていますが。
長島:
原子力は地震の危険もありますが軍事的な標的になります。そのことはロシアとウクライナの紛争で明らかです。いくら防衛費をかけても、原発があると、それが急所になりますから、国を守るには大きな困難が生じます。原発にミサイルを撃ち込まれたら、国だけじゃなく地球全体が大変なことになってしまいます。それに原発の発電単価はとても高いのです。福島第一原発の事故で危険性は痛感したと思いますし、ウクライナのことで有事のときの攻撃対象になることもわかりました。もはや経済的にもまったく優位性はありません。高くて危険なエネルギーです。いずれ立ち枯れていくしかないと思います。ほかにも水素の時代になると言っている方もいます。だけど、私はそうはならないと思います。と言うのも、水素は長期保存ができません。鉄のタンクに入れても、分子が小さく徐々に分解して漏れてしまいます。水素を液体にして貯蔵する方法はあるけれども、マイナス260度近くまで温度を下げないといけません。そのための設備と極低温を保つためのエネルギーをどうするのかという問題が残ります。
中川:
化石燃料に変わるエネルギー源はいろいろ言われていますが、なかなか実用化できないのが現状ですね。
長島:
そもそも大きな発電所を作ってみんなに配るという考え方を変える必要があります。もともと発電所は大きく作る方が発電の効率が上がりコストが下がります。だから、ずっと電力会社の仕事として評価されてきました。 今は太陽光発電を使えば、だれでも電力会社と同じように効率よく電気が作れます。まさにエネルギーの民主化と言えるでしょう。電力料金の中に原子力維持や超高圧の送電網の負担金も均一に分担される仕組みになっていますが、これは、お酒が飲めないのに宴会の飲み放題の参加費を払っているようなものだったのです。これからは、必要なときに必要な分だけ自分で作ることができる時代が到来するでしょう。北海道で地震による大規模停電がありました。大きな発電所に依存していたから、発電所に異常が起こったことで、あんな大事に至ったのです。各家庭で電気を作っていれば、あれほどの大騒ぎにはならなかったのではないでしょうか。<後略>

千葉県市原市 ソーラーシェアリング実証実験場にて 構成/小原田泰久

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