今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2023年6月「吉田 明生」さん

吉田 明生(よしだ・あきお)さん

一般社団法人災害防止研究所代表理事。1977 年防衛大学卒業。元陸上 自衛隊第11旅団長、元ゆうちょ銀行社長特命担当顧問。2020年3月に退 職 。 一 般 社 団 法 人 災 害 防 止 研 究 所 を 設 立 。 著 書「 ま ぁ る い 日 本 ~ リ ー ダ ー シップの時代【人を動かす】』『まぁるい日本究極の戦い究極守り』『しなやかで まぁるい心のつくり方』など。法人災害防止研究所

『災害によって培われてきた日本人のメンタリティを大切にする』

防災グッズは日常的に防災を考えるためのツールになる

中川:
東日本大震災から 年がたちますが、相変わらず地震は多いし、この間はトルコ・シリア大地震がありました。豪雨の被害も毎年出ています。多くの人が災害に対してとても敏感になっています。 吉田さんが代表理事をやられている災害防止研究所の災害へのアプローチの仕方はとてもユニークだと思います。たとえば、防災グッズ展というのを開催されて、防災グッズ大賞を選ぶなど、防災を身近に感じられるように工夫されているような気がします。
吉田:
ありがとうございます。防災グッズ展は防災意識を普及するにはどうしたらいいか、みんなで考えて出てきたアイデアです。 防災の重要性はだれもがわかっていると思います。しかし、教訓ばかりでは聞く方もあきてしまうのではないでしょうか。多くの人が興味をもってくれて、楽しみもあって、長く続くものはないかということで防災グッズに目をつけました。
中川:
災害はないに越したことはありませんが、起こることを前提に準備した方がいいと思います。どんな防災グッズがあるかを調べて、これは使えると思うものをそろえておくといいですね。
吉田:
防災グッズは日常では体験することのない酷な環境で使うもので、これまでの災害を踏まえた上での創意工夫がなされています。そういう意味で、災害の教訓が集約されているのが防災グッズだと思うんですね。
防災グッズを手に取ったときには、どうやって使うのかイメージするわけです。あるいは、どういう状況なのか想像すると思うのです。防災防災と言わなくても、地震があるとこんなことに注意しないといけないと、意識が防災に向くと思います。 
日常的に防災意識を普及するためのツールとして防災グッズという切り口は面白いのでは? というのが、防災グッズ展、防災グッズ大賞を始めた理由です。
中川:
今年も4月1日からエントリーが始まっているようですね。企業や個人からたくさん集まってくるそうですが、吉田さんたちも探したりするのですか。
吉田:
最初の年は、モノマガジン社さんが協力してくれました。防災グッズを取り扱った日本で最初の雑誌ですね。モノマガジンにさまざまな防災グッズが掲載されているので、10数年のバックナンバーからリストを作って、それをベースにして選びました。今は、ネットに出ていますので、応募してくださる企業や個人の方々の商品にプラスして、面白い防災グッズがないか探しています。防災グッズはまだマーケットが小さくて、大きな会社で開発していても、一セクションでやっている程度です。特徴のあるのは小さなメーカーが作っているものが多いですが、営業力が無かったりして、すぐれた防災グッズが世間に知られないまま埋もれていたりします。災害があったときには防災グッズは欠かせません。それがあったことで命が助かる方もいるでしょう。防災グッズ展や防災グッズ大賞を通して、防災グッズがもっと注目されればと願っています。
中川:
吉田さんはもともと陸上自衛隊に勤務されていたそうですね。どうして災害防止研究所を立ち上げようと思われたのですか。
吉田:
東日本大震災があったときに、友だちが「自衛隊が終わったら防災の仕事をしたらどうだ」と言ってくれました。 防災の大切さはわかっていましたが、そのときには自分で取り組もうとは思いませんでした。その後、ゆうちょ銀行に勤め、6~7年たったころにふと浮かんだのが、先ほどの友だちの言葉で、防災のことをあれこれ考え始めました。 防災のことはたくさんの人がやっているので、私の出る幕などないように思っていましたが、災害というのは自然災害ばかりではなく、戦争やテロといった人為的なものも入りますし、事件や事故も災害ですし、最近は地球温暖化が大きな問題になっています。 そう考えると、これからはもっと災害が増える時代がやってくるのではないかと思いました。防災というのを幅広くとらえて、さらにメンタルな面まで踏み込んで災害を防止するということなら、長く自衛隊で働いていた自分にも経験を活かせるかもしれないと思って、この団体を立ち上げました。
中川:
吉田さんのご著書を読ませていただきましたが、メンタルな面に力を入れている印象がありました。 メンタルは大事だと思います。いきなり災害に見舞われれば、だれもがパニックになってしまいます。そのために被害が大きくなったりします。日ごろから冷静に頭の中で考える訓練をしておくことも大切ですね。
吉田:
自衛隊というのは危機管理が主な仕事です。最悪の事態を想定して、危機にどう対処するのかを常に考えてきました。そうした経験や知識が少しは役に立つのではないかと思いました。<後略>

東京・ 池袋のエスエーエス東京センターにて 構成/小原田泰久

しなやかで まぁるい心 の作り方: ~災害に備えて、レジリエンスを養う/メンタルヘルスケア
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