今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2020年9月「関野 幸生」さん

関野幸生

関野 幸生(せきの・ゆきお)さん

1971年埼玉県生まれ。30歳で家業である農業を継ぐ。4年目から無農薬・無肥料による自然栽培を始める。1町歩の畑で野菜を栽培しつつ、各地で自然栽培の指導や講習・講演を行っている。著書に『固定種野菜の種と育て方』(野口勲氏との共著・創森社)『とっておきの野菜づくり』(渋谷正和氏との共著・成美堂出版)がある。

『無農薬・無肥料・自家採種で生命力のある野菜を作る』

肥料をやり過ぎると病気にもなりやすくなり虫が集まってくる

中川:
関野さんが書かれた『とっておきの野菜づくり』(成美堂出版)という本を読ませていただきました。写真がたくさんあって、私のように農業には不案内な者でも、ダイコンやニンジンはこうやって作るんだとイメージすることができます。どんな虫がつくかも書かれていて、農業をやろうという人にはすごく参考になりますね。
関野:
ありがとうございます。渋谷正和さんという長く有機栽培をしている方と一緒にまとめたものです。編集者の方も農業をやっていたので、とても力を入れて作ってくれました。でも、絶版になると連絡がありまして、とても残念です。
中川:
絶版ですか。残念ですね。これを一冊もっていると農業はやりやすいと思います。私は、これからは農業がとても大切になってくると思います。特に、関野さんがやっておられる自然栽培は、健康の問題、環境の問題にもかかわるということで、ますます注目されるのではないでしょうか。
関野:
農薬も肥料も使わない自然栽培を始めて16年になりますが、始めたころはなかなか理解してもらえませんでした。みなさん、肥料なしで野菜ができるはずがないという先入観があって、有機栽培ならわかるけれども、自然栽培は無理だろうと言われました。
ところが何年か続けているうちに興味をもってくれる人が出てきて、インターネットで仲間ができたり、扱ってくれるお店や飲食店が増えてきました。奇跡のリンゴの木村秋則さんが本や映画で話題になったのも追い風でしたね。
中川:
野菜を作ればそれだけ土地の養分が減ると考えますよね。減った分、肥料で補わないといけないというのが普通の考え方なのでしょうね。関野さんの家はもともと農家だったのですか。
関野:
私が4代目です。地主ではなく小作でたくさんの畑があったわけではありませんでした。父も、それほど一生懸命に農業をやっていた人ではなかったですし。
私は、車の整備士をやっていて、30歳になったのをきっかけに農業を継ぎました。祖父が種のまき方、収穫の方法、出荷の仕方など、基本的なことを教えてくれました。祖父が教えてくれたのは、農薬も化学肥料も使う普通の農業です。私は、農薬は使いたくないと思っていたので、2年目から無農薬にして、肥料は試行錯誤しながら使っていましたが、4年目からは農薬も肥料も使わない自然栽培を始め、16年がたちました。
中川:
今、どれくらいの広さの畑をやっておられるのですか。
関野:
最近3反ほど借りて、1町になりました(1反は約1 0 0 0 ㎡。一町は約1 万㎡)。40種類ほどの作物を、基本的には妻と2人で作っています。たまに研修という形でお手伝いに来てくれる方もいます。
中川:
自然栽培については、木村秋則さんや川口由一さんら大御所にもお話をお聞きしたことがあって、ずっと興味をもっていましたが、彼らもとても苦労をしてやり遂げています。関野さんもご苦労はあったのではないでしょうか。
関野:
農薬をやめたとき、私の畑は住宅街にあったので、虫なんかこないだろうと思っていました。ところが、どこからともなくやってくるんですね。そして、葉っぱを食べてしまいました。虫食いの野菜は出荷なんかできないですよ。
そのときに、農薬を使わずに栽培するには知識も経験も必要だと痛感し、本を買って独学で無農薬栽培のやり方を模索しました。『野菜づくりと施肥』(農文協)という本がすごく参考になりました。そこには肥料をやり過ぎると良くないと書かれていました。ネットを見ると、肥料を使わずに野菜を作る方法があると知り、半信半疑でしたが始めてみました。
試行錯誤の連続で、何となく行けると思ったのが7年目。8年目からは、だいたいの作物が無肥料でも育つようになりました。ピーマンなんかはいまだに苦戦していますけどね。
中川:
肥料をやり過ぎるのは良くないんですね。
関野:
人間でも朝昼晩とお腹いっぱいご飯を食べると体調を崩すじゃないですか。食べ過ぎて病気になっている人はたくさんいます。どんな生き物も食べ過ぎは良くないのではないでしょうか。
中川:
肥料をたくさんあげれば大きくて立派な野菜ができるように思ってしまいますけどね。
関野:
肥料をたくさん入れれば野菜は大きくなりますが、言ってみれば、メタボの野菜です。ダイコンをおろすと水ばっかりじゃないですか。水膨れなんですよ。自然栽培のダイコンは、おろしても綿みたいにフワッとしています。キュウリもそうですが、肥料で大きくなっても、水を食べているようなものです。
中川:
肥料をあげると病害虫も多くなるんですね。
関野:
植物には細胞膜の外に細胞壁があります。肥料をあげると、細胞壁が薄くなってしまうことがわかっています。それに細胞同士の結びつきも弱くなります。そのために病気にかかりやすくなります。不健康な野菜だと、虫も集まってきます。

<後略>

著書の紹介

「とっておきの野菜づくり」 関野 幸生、渋谷正和(共著) 成美堂出版
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