今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2008年12月 「倉持 仁志」さん

倉持 仁志(くらもち ひとし)さん

1954年栃木県生まれ。宇都宮大学農学部農芸化学科卒。三井石油化学工業株式会社(現三井化学株式会社)で新規除草剤の開発を担当。92年に退社し、宇都宮大学に。97年からイワダレソウの品種改良に取り組む。現在、宇都宮大学雑草科学センター講師。

『驚きと希望。名もない雑草が砂漠を緑化する切り札に!』

野生の馬に導かれてイワダレソウと出あった

中川:
はじめまして。先生のことを紹介した「夢の扉~NEXT DOOR」というテレビ番組の録画を見せていただきました。イワダレソウという雑草を品種改良されて、砂漠の緑化に取り組んでおられるということでしたが、イワダレソウというのはすごい草ですね。驚きました。
倉持:
ありがとうございます。あの番組は2年くらい前に放映されたものです。
イワダレソウとは13年ほどの付き合いですが、やっと多くの人に、その可能性を感じていただけるようになってきました。
中川:
そもそもイワダレソウは、どういう草なんですか。
倉持:
これがイワダレソウです(机の上の鉢にイワダレソウが植えつけられている)。見てお分かりになるように、あまり上に立ち上がらず、横にびっしりと伸びていきます。(鉢をひっくり返して鉢から取り出し、土の部分を見せながら)こういうふうに、びっしりと根が広がっています。根が土をしっかりとつかんでいますよね。この根は、生育環境が良ければ、1.5メートルの深さまで伸びます。この根があるから、土壌の流出を防ぐことができるし、砂漠でも深いところから水分や栄養を吸収できるんですね。
学問的な分類としては、クマツヅラ科に属します。世界中の熱帯、亜熱帯地方に育っていて、日本では、沖縄で多く見られますね。海岸にあることが多い植物です。
中川:
(イワダレソウを触って)これがそうですか。ひんやりして柔らかくて気持ちいいですね。
こんな小さな葉っぱなのに、1.5メートルも根が伸びるというのはすごいですね。これで、砂漠を緑化しようというわけですね。
イワダレソウと先生のご縁というのは、何がきっかけだったのですか。
倉持:
与那国島から、海岸沿いの芝地が雑草だらけになっているので何とかしてくれないかという依頼がありました。私はずっと除草剤を研究してきましたから、それが本来の仕事でした。
除草の仕事が終わってひと息ついていたときでした。
芝地に野生の与那国馬がいるのに気がついたんですね。小さくてかわいい馬でした。
私も動物が好きなものですから、一頭の馬に近づいて行って、なでようと手を出したんですね。そしたら、その馬がさっと逃げて行きました。そして、少し離れたところから、こっちを見ている。
私は、またその馬に近づいて行きました。今度は逃げませんでした。そのときに、何気なく馬の足もとを見たら、そこに見慣れない草があったんです。
びしっと土をつかむように生えている。
それがイワダレソウだったんです。
茎は太いし、引っ張ってみても簡単に抜けません。これは使えるかもしれないと直感的に思ったんですね。それで、宇都宮へ持ち帰りました。
中川:
馬が逃げなかったら出あわなかったかもしれませんね。導かれたようなご縁ですね。
そこからイワダレソウの研究が始まったんですね。
倉持:
関東にはない草だったし、元気そうだったので興味をもったんですね。上に伸びずに横に広がっていく草なので、これは芝の代わりになるんじゃないかと思いました。
中川:
そのときから、先生は環境のことには関心をもっておられたんですか。
倉持:
いえいえ。そのときは、雑草を使うなんて考え方はまるっきりありませんでした。
雑草は、作物の害になるなら、全部殺してしまえという考えでしたから(笑)。
ゴルフ場に生える草は除草し、水田の草も殺してしまう。そればっかりやっていましたから、雑草が役に立つなんてことは、思ってもみませんでした。
そうじゃないよって、馬が教えてくれたんでしょうかね(笑)。
中川:
イワダレソウに出あってから、雑草に対する見方が変わったんですね。
倉持:
そうですね。でも、除草の仕事をやめたわけではありません。管理という面では、ときには除草をする必要もあります。
除草するときと生かすときと、使い道がとても大切だと思っています。
中川:
イワダレソウを宇都宮へ持ち帰って、それからいろいろとご苦労もあったかと思いますが。
倉持:
最初は温室で育てました。これなら芝の代替に使えるという感触を得ました。根っこがすごく伸びるから、土壌流出の防止にもいいなと思った。1年くらい、のめりこんで研究しましたね。
でも、温室の中で見ていても仕方ありません。外で育たないと意味がないわけですから。それで、外の畑に植え付けてみたんです。

(後略)

(2008年10月8日 宇都宮大学雑草科学センターにて)

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