今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2010年10月 「陽 捷行」さん

陽 捷行(みなみ かつゆき)さん

1943年山口県生まれ。71年東北大学大学院農学研究科博士課程修了。77年米国アイオワ州立大学客員教授、2000年農林水産省農業環境技術研究所所長、01年独立行政法人農業環境技術研究所理事長をへて、05年より北里大学教授。現在、北里大学副学長。日経地球環境技術賞など受賞歴も多数。著書に「土壌圏と大気圏」(朝倉書店)「農と環境と健康」(アサヒビール)などがある。

『分離の病から脱却し、連携の科学を大切にする方向へ』

生き物はすべて土から生まれて土に帰っていく

中川:
なるほど。私はそんなことは考えたこともありませんでしたが、私どものやっている真氣光の「氣」という文字は、昔ながらの中が米になっている字です。先代が、この字は、私たちの命の素でもある米から出ているエネルギーを表しているんだということで、この文字を使っています。一般的に使われている「気」と比べると、「氣」の方がはるかにエネルギーが高いように、私も感じています。漢字は、神様と交信するために作られたとおっしゃいましたが、その話をお聞きして、私どもも、氣という文字を通して、神様と交信しているのかなと思いましたね。
陽:
その通りでしょうね。だから、名前は大事なんですよ。親が思いを込めてつけてくれた名前です。それを、選挙に出るときには、ひらがなにしてしまったりするのはおろかしいことですよ。氣という文字を使われるのは、すごくいいと思いますよ。
中川:
私の名前の「雅仁」というのも、父がある高名な神道家の方からつけていただいた名前を引き継いだものです。会社や組織を任されたというより、真氣光というエネルギーを引き継ぐという意味合いが強かったものですから。ところで、先生は農学がご専門で、今は北里大学で農医連携というテーマを進めておられますが、そのあたりの経緯について、お話いただけますか。
陽:
漢字の話を聞きに来られたわけではなかったですね(笑)。そろそろ本題に入りますか。私の専門は「土壌学」です。川にいるドジョウじゃないですよ(笑)。「土壌学」というのは、土壌がどのように生成され、分布し、分類されるかという研究のほか、食料を大量に生産するにはどうしたらいいかとか、生態学や物質循環とのかかわりでの研究が行われたり、さらには民族の文化や文明、健康に深くかかわったものとしての学問でもあったりと、非常に幅広く研究されています。いろいろな研究があるわけですが、土壌を語る上で、一番大切なことは、土壌は生命の源だと言うことですね。明治時代の小説家の徳とくとみ冨蘆ろ花かは、「みみずのたはごと」という作品で、次のように書いています。《土の上に生まれ、土の生むものを食うて生き、而して死んで土になる。我等は畢ひっきょう竟土の化物である。土の化物に一番適當した仕事は、土に働くことであらねばならぬ。あらゆる生活の方法の中、尤もっともよくものを撰み得た者は農である》孔子も、あまり自然を語らなかった人ですが、土については非常に含蓄のある言葉を残しています。《人の下なるもの、其はなお土か! これ種えれば、すなわち五穀を生じ、禽きん獣じゅう育ち、生ける人は立ち、死せる人は入り、その功多くて言い切れない》いいことを言っていますよね。生き物は、すべて土から生まれて土に戻っていくことになっているんす。「星の王子さま」のサン=テグジュペリも、いろいろなところを旅している人ですが、その土地土地で土が語りかけてくるんだと言っています。私も、高校生のときに、人間は土から生まれたのだから、土壌のことを勉強しなければと思いました。何がそう思わせたのかはわかりませんが。

<後略>

(2010年8月3日 北里大学相模原キャンパスにて 構成 小原田泰久)

著書の紹介

「人びとの健康と地球環境保全のために―農医連携」(エムオーエー商事)

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