今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2011年9月「チャールズ マクジルトン」さん

チャールズ マクジルトン(ちゃーるず まくじるとん)さん

1943年アメリカ・ミネソタ州生まれ。高校卒業後、アメリカ海軍に入隊し、横須賀基地に配属となる。1991年に上智大学に留学、山谷で生活する。その後、フードバンク運動にかかわり、2002年にセカンドハーベストジャパンを設立する。現在、理事長。Tシャツに作業ズボン姿で、あるときは運転手、あるときは営業マン、あるときは経営者という、さまざまな顔で活躍中。

『捨てられ死んでいく食品に命を吹き込むフードバンクという活動』

廃棄される食品を引き取 り、それを必要としてい る人に配る

中川:
セカンドハーベスト・ジャパン(以下2HJ)のことを本で読ませていただきました。フードバンクというのだそうですが、とてもユニークなシステムですね。
チャールズ:
ユニークですか。アメリカでは、フードバンクは40年の歴史があります。日本では、私が2HJを立ち上げたのが2002年で、最初のフードバンクでした。今は、10 団体くらいありますね。
中川:
食品メーカーや卸し、小売店、食品輸入業者、レストランなどで廃棄される食品を引き取り、それを児童養護施設や女性シェルター、福祉施設など、食品を必要としているところに配布するというシステムですよね。
チャールズ:
そうですね。廃棄される食品と言っても、賞味期限、消費期限が切れたようなものではなく、安全に食べられるにもかかわらず、捨てらてしまうものを引き取ります。
中川:
たとえばどんなものがあるんですか?
チャールズ:
いろいろありますね。コンビニやスーパーでは、賞味期限、消費期限が近づくと、買ったお客さんがすぐ食べないといけないのでという理由で捨ててしまいます。また、メーカーから出荷するときの検査で、ラベルの印刷が薄かったりすると、それも廃棄されます。運送中に外箱がへこんだり少し破れたりするだけでも、もう商品にはなりません。
どれも、品質には何も問題がありません。しかし、外見上の問題で、廃棄されてしまうのです。
中川:
食べられる食品の3分の1が捨てられているそうですね。全然知りませんでした。本当にもったいないことですね。
チャールズ:
その一方で、私たちの調査によると、貧困層と言われる人たちの中で、約65万人の方が十分な食料を確保できていません。母子家庭とか高齢者、ホームレスの方々ですね。そういう人たちに、食べられるのに捨てられている食品を届けようというのが私たちの仕事です。
中川:
大きな矛盾ですよね。世界一の食料の輸入国なのに、捨てる量も半端ではなく、その一方で、食料がなくて困っている人もたくさんいるわけですから。
チャールズ:
食品企業にとっても、食品を廃棄するのにはコストがかかります。私たちが引き取って、それを必要としているところへ配れば、企業としてもコストもかからないし、捨てる罪悪感ももたなくていいですから、とても大きなメリットだと思いますよ。
中川:
3月に震災があって、何か変化はありましたか。
チャールズ:
すごい変化ですね。まず、寄付金がびっくりするくらい集まりました。ホームページを見ていただければわかりますが、今は一時寄付をストップしてもらっています。去年は年間で集まった寄付金が6500万円でした。それが、災があってから3ヶ月で9000万円ほど寄付がありました。
1年半分の金額だし、それを被災地のために使うとなると、しっかりと予算を組む必要があります。まだ、予算が組まれていませんので、どう使っていいかわからない状態で、これ以上集まるとまずいということでストップしました。
中川:
普通はたくさん集まれば喜んで受け取ると思いますが、ストップしたのですか。
チャールズ:
おかしいんじゃないのと言われました(笑)。でも、私たちはビジネスセンスをもって2HJを運営していきたいので、きちんと予算が立ってから寄付をお願いすると、寄付を申し出てくださる企業にも伝えました。
そしたら、逆にとても信頼されましたね。必要なときはいつでも言ってほしい、応援するからと言われました。
中川:
それはとても大切なことですね。非営利な組織だと、どうしてもビジネス面が弱くなりますからね。
チャールズ:
それはとても大切なことですね。非営利な組織だと、どうしてもビジネス面が弱くなりますからね。
配った量も、震災後5月末までに400トンです。去年は1年で813トンでしたから、1ヶ月半で半年分働いたことになります。スタッフもボランティアもがんばってくれました。

(後略)

(2011年7月21日 東京都 台東区のセカンドハーベスト・ ジャパンにて 構成 小原田泰久)

著書の紹介

フードバンクという挑戦 岩波書店

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