今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2022年5月「覚 和歌子」さん

覚 和歌子(かく わかこ)さん

作詞家・詩人。平原綾香、SMAP、沢田研二などの作詞を手掛ける。2001年『千と千尋の神隠し』の主題歌『いつも何度でも』の作詞でレコード大賞金賞。詩集に『ゼロになるからだ』(徳間書店)、『海のような大人になる』( 理論社)など。自唱ソロCDに『青空1号』(ソニー)、『カルミン』(valb)、『ベジタル』(valb)、『シードル』(モモランチ)がある。エッセイ、絵本など著作多数。

『不思議な感覚で降りてきた『千と千尋の神隠し』の主題歌』

詩は、もともと祝詞から始まっているのではないか、と思います

中川:
覚さんはスタジオジブリの映画『千と千尋の神隠し』の主題歌「いつも何度でも」を作詞された作詞家であり詩人です。音楽やアニメにそれほど詳しくない私でも、この歌はよく知っています。不思議な詩だな、と思いながら聴いていました。その作者にお会いできるとは本当に光栄です。今日はご自宅におうかがいしたのですが、テーブルの上にはCDや詩集、それに占いのカードを用意してくださっていて、いろいろなことをやっておられる覚さんですから、何からお話をうかがいましょうかね。この占いのカードにしますか。「ポエタロ」って言うんですね。覚さんが作られたんですか?
覚:
「ポエタロ」は「ポエムタロット」の略です。一般的にオラクルカードと呼ばれるものの一種ですが、友だちがくれたカードで私自身、気持ちが楽になったことがありました。それで、詩でも作れるんじゃないかと思いました。心理学者のユングが偶然に見えることにはすべて意味があると言っています。ぱっと開いたカードにも意味がある。自分で聞きたいことを考えながら直感と結びついてる左手で引くんですね。 でも、いきなりカードの話でいいんですか(笑)。さすが氣功の先生ですね。
中川:
何となくふっと気になったあるのではないでしょうか。 詩も短い言葉でメッセージを伝えるわけですから、詩人の覚さんがこういうカードを作るのも意味があるのかと感じました。
覚:
ふっと気になったとおっしゃいましたが、詩も作るものではなく、ふっと生まれるものほど、エネルギーがあるように、私は感じています。 私は、詩はもともとは祝の り詞とが始まりだと考えています。神様と交感する言葉が芸能になり、詩になったのではないでしょうか。 目で読む文字言葉と発声する言葉のうち、私が大事にしているのは音声としての言葉です。記録としては残らないけれども、波動が残ります。私の場合、そこへのアクセスが強いと思っています。
中川:
なるほど。お経を作りたいとお書きになっていましたが、お経も祝詞も意味を知ることよりも、波動を感じることが大事なのかもしれないですね。ポエタロも言葉の波動を感じて引くんでしょうね。 詩集の中にはひらがなだけのものもありましたが。
覚:
ひらがなは響きにとても近い文字だと思います。ひらがなは一文字一音です。漢字は意味を伝えるけれどひらがなからは音が伝わってきます。
中川:
ひらがなの方が、波動を感じられるということでしょうか。私も日本語は不思議だなと思っています。50音があって、その組み合わせで言葉ができるわけですから。 覚さんは、子どものころから波動を感じるような特殊な感性があったのでしょうか。
覚:
幼いころからカンの強い子で、見えないものの存在をキャッチして生きてきたように思います。HSPというのをご存じでしょうか。HighlySensitivePersonの略で、過剰な感受性をもって生まれた人という意味です。昔は、単に神経質な人で精神修養が足りないのだと見られていましたが、HSPという形でカテゴライズされたときに、「自分はこれなんだ」とわかってとても安心しました。背が高いのと同じように生まれ持った個性だとわかって、居場所が見つかったような気がしました。
中川:
初めて聞きますが、どんな特徴があるのですか。
覚:
細かいことを過剰に気にするというのが特徴の筆頭です。また私は聴衆がいないところで歌ったり合唱するようなときには、上手に歌えるんですが、ソロで人前でとなると膝がガクガク震えて声が出なくなるんですね。それもHSPの大きな特徴で、衆目の中で自分を発揮できないという気質です。
中川:
でも、ライブをやっておられますよね。
覚:
実はライブのときもすごく怖いんです。でも、どういうわけかやらずにいられません。どうしてでしょうね(笑)。小学生のとき、所属していた合唱団から先生に推薦されて、独唱コンクールに出ることになりました。練習では上手に歌えたのに本番では緊張してボロボロ、その後のトラウマになりました。歌は大好きですが、自分では失敗体験を重ねているという認識です。
中川:
まわりの人の氣を敏感に感じ取ってしまうんでしょうね。覚 詩も気が乱れている東京では書けなくて。今は八ヶ岳にアトリエがあって、詩作はもっぱらそちらですね。 人の気配があると集中できないんです。『千と千尋の神隠し』の主題歌のときは、八ヶ岳にまだ家がなかったので、静かな夜の時間を使って東京で書きましたけど。 
<後略>

都内の覚和歌子さんご自宅にて 構成/小原田泰久

はじまりはひとつのことば

覚 和歌子 (著)
出版社 ‏ : ‎ 港の人

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