今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2014年10月 「枡野 俊明」さん

枡野 俊明(ますの しゅんみょう)さん

1953年神奈川県生まれ。曹洞宗徳雄山建功寺住職、庭園デザイナー、多摩美術大学環境デザイン学科教授。玉川大学農学部卒業後、大本山總持寺で修行。禅の思想と日本の伝統文化に根ざした「禅の庭」の創作活動を行い、国内外から高い評価を得る。2006年「ニューズウイーク」誌日本版にて「世界が尊敬する日本人100人」にも選出される。カナダ大使館、セルリアンタワー東急ホテル日本庭園、ベルリン日本庭園などをデザイン。著書は「心配事の9割は起こらない」(三笠書房)「禅が教えてくれる美しい人をつくる「所作」の基本」(幻冬舎)など多数。

『無駄なものをそぎ落とせば心配や不安が消えていく』

所作を整えることで、言葉が変わり、心も豊かになる

中川:
ご住職の「心配事の9割は起こらない」(三笠書房)という本を拝見しまして、まずタイトルにひかれて買ったのですが、内容もとてもすばらしくて、ぜひお目にかかりたいと思っていました。そしたら、ご住職が書かれた「禅が教えてくれる 美しい人をつくる『所作』の基本」(幻冬舎)という本を家内がすでに買っていたみたいで、家の本棚にあったので、それも読ませていただきました。この本にも感銘を受けました。デザイナーの芦田淳先生の推薦文が帯に書かれていますよね。芦田先生の書かれている本を何冊か読んだことがあり、お人柄には惹かれておりました。
枡野:
ありがとうございます。私は、芦田先生とはまったく面識がなかったのですが、先生がこの本をとても気に入ってくださいまして、社員の方全員に配ってくださったそうなのです。それがきっかけで、芦田先生のお宅におうかがいしました。縁というのは不思議なものです。
中川:
「所作」という言葉は日本的でとてもいい響きですよね。今は、日本人が脈々と受け継いできた伝統が西欧化によって失われつつあると思います。日本人がずっと大切にしてきた所作を見直すことで、日本人の心も取り戻せるのではないでしょうか。
枡野:
私は禅宗の僧侶ですから坐禅をしますが、坐禅というのはとらわれない心を得るためにやります。心を整えるためには、ルールがあります。三さん業ごうを整えるといいます。
最初の整えるのが、身しん業ごうです。これが、所作なんですね。心を整えるといってもどうしていいかわかりません。心を整えるためには、正しく体を動し、折り目正しい生き方をして、一つひとつのことを心を込めてやっていくことを心がけます。そうすると、不思議と出てくる言葉もていねいになって、雑な言葉が出なくなります。所作と言葉はリンクしています。所作が整っていると、そこから出てくる言葉もきちんとしてきます。それを口く業ごうといいます。
身体の動きが整い、言葉が整えば、心が整います。それを意い業ごうといいます。心を整えてくださいというと何をしていいかわかりませんが、所作を整えると、連動して言葉が整い、所作と言葉が整えば、心も整ってきます。
中川:
確かに、服装ひとつでも気持ちが変わりますね。服装だけでなく、朝起きたら手を合わせてみるとか、自然を感じながらゆっくりと歩くとか、背筋を伸ばすとか、深い呼吸を心がけるとか、そんなことでも、心は変わります。受験生も、はちまきをするとやる気が出たりしますしね(笑)。
枡野:
そうなんですね。サラリーマンの方は、昔は夏でもネクタイをしていましたですね。今は省エネルックということでノーネクタイの方が増えましたが、ノーネクタイだと心がしまらないと言う人は多いのではないですか。ネクタイをキュッとしめると、仕事をするというモードになるのでしょうね。たかがネクタイ、されどネクタイですね。
中川:
私ももともとはサラリーマンでしたから、その気持ちはわかります。確かに、形から入ると、気持ちも変わりますね。でも、今は、形ばかりが優先されている風潮があると思います。心の大切さが、どこかへ置き去りにされているように思えてなりません。
枡野:
心の問題というのは、形がないものですから、見える部分だけが重要視されてしまいがちですね。きれいな服を着るとか、ブランドのバッグをもつとかといったことばかりに目がいってしまってます。そこが終着点になってしまって、心をきれいにしていくということが、欠落しがちですね。しかし、いくらブランド品で着飾っていても、心が曇っていると、必ずそれは表に出てきてしまいます。形をしっかりと整えることで心が磨かれ、磨かれた内面が外見も輝かせる。そうなると一番いいのですが。

<後略>

(2014年8月5日 横浜市鶴見区の曹洞宗徳雄山建功寺にて 構成 小原田泰久)

著書の紹介

「心配事の9割は起こらない」 枡野 俊明 著 (三笠書房)
「日本人はなぜ美しいのか」 枡野 俊明 著 (幻冬舎新書)

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