今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2013年4月 「広田 行正」さん

広田 行正(ひろた ゆきまさ)さん

1962年生まれ。写真家。タヒチ、モルディブ、バハマ、ハワイなど南の海を中心に100回近い海外ロケを行っている。長く読み続けられる本を作ることを目標とし、奥さんで作家の広田千悦子さんとの共著は多数ある。「湘南ちゃぶ台ライフ」(阪急コミュニケーションズ)「「捨て犬サンの人生案内」(メディアファクトリー)「おうちで楽しむ日本の行事」(技術評論社)など。東京新聞、中日新聞で毎週月曜日、「くらし歳時記」連載中。

『湘南発! 身近にあるすてきな光景を写真で伝える』

山の中なのに海まで歩いて数分、富士山も見えるというロケーション

中川:
はじめまして。この家は、広田さんが仕事場にされている所ですか。縁側にお日様が当たって、古き良き日本の家屋という感じがします。
広田:
この家は、築70年ほどたちます。お年寄りのご夫婦が住んでおられたのですが、ご主人が亡くなって、おばあちゃん一人じゃちょっとと言うので、出て行かれて、空家になっていたのをお借りしました。壁にしっくいを塗ったりして補修しましてね、今はスタジオとして使ったり、展覧会をやったりしています。庭で、仲間を集めて焚き火をやることもあります。
中川:
映画の撮影とかでも使われるそうですね。
広田:
昨日も、秋に公開される映画の撮影がありました。こたつを置いたり、塀を作ったり、すっかり様子が変わってしまってびっくりでしたよ。
以前、モスバーガーのCMでも使われました。この庭で、忽那汐里ちゃんが、ハンバーガーを食べるというシーンを撮っていました。小泉今日子さんが雑誌の撮影で来られたこともありました。
中川:
この家の雰囲気もいいし、まわりにも自然がたくさんあって、いいですよね。今日は、車でおうかがいしましたが、1時間くらいで来られますからね。東京の近くに、海あり、山ありの、こんないいところがあるとは驚きですよ。
広田:
この下に川がありますが、梅雨の季節にはホタルが出ます。昔、護岸工事をする前は、ホタルが乱舞していたようですが、今は毎年30匹ほどですかね。
中川:
いいですね。このあたりに住まれてどれくらいになるのですか。
広田:
もう20年くらいになります。前は東京に住んでいたのですが、この近くに友だちが住んでいるので、ときどき遊びに来ていました。子どもが欲しくなって、自然の中で暮らしたいと思い、そういう物件を探したら、この場所を紹介されました。山の中なのに、海まで歩いても数分で出られます。富士山も見ることができて、なんてすてきなところだと気に入ったのですが、東京の生活に慣れていると、山の中の静けさや、真っ暗な夜というのは、最初は怖かったですね。
中川:
広田さんはカメラマンで、横須賀とか葉山とか、このあたりの風景を撮っておられて、中日新聞や東京新聞には、毎週、「くらし歳時記」というのを連載されていますね。広田さんの写真に奥さんの文章が添えられて、すごく温かいコラムになっていると思います。きれいな富士山がバックにあって、海では漁師さんがわかめを取っていたり、とても季節感のある写真を撮っておられますね。
私がびっくりしたのは、蜃気楼の写真です。富山湾の蜃気楼は有名ですが、こちらでもあんなにはっきりと蜃気楼が見られるんですね。
広田:
ありがとうございます。新聞の連載は5年半になります。毎週締め切りが来ますから、今度はどうしようかと、いつもネタを探しています。幸い、山も海もあるので、何かしらいいネタは見つかります。蜃気楼は、1月の寒い朝でしたが、8時ごろに海を見たら、あの蜃気楼が出ていたんですよ。蜃気楼はときどき見るのですが、あんなにはっきりと見えたのは初めてでしたね。
中川:
蜃気楼は衝撃的な光景ですから、ぱっと目につくとは思いますが、そのほか、小さな発見がいっぱいあるじゃないですか。日々、まわりを観察していないと、なかなか目につかないことですよね。
広田:
私は、毎朝、高校生の子どもを逗子の駅まで送って行って、ゆっくりと朝の海を見ながら帰ってきます。毎日のように見ていますから、ちょっとした変化でもキャッチできるようになりました。カメラはいつももっていますから、何かあると、それを撮るようにしています。山も、ゆっくりと歩きながら見ていると、そろそろふきのとうが出てきたなとか、いろいろと発見がありますよ。
中川:
玄関に、富士山の頂上に夕日が沈む写真が飾ってありますよね。すごい写真ですね。日常の景色を撮りつつ、ああいったスケールの大きな写真も撮られるわけですね。
広田:
ダイヤモンド富士ですね。あの写真も、我が家の周辺で見られる光景です。春と秋に、あの位置に太陽が落ちるのが見られます。でも、ちょうどモヤがかかりやすい時期なものですから、なかなかうまく撮れません。あの写真は3年前に撮ったのですが、それ以降、天候の関係でうまく撮れていませんね。
この近くでは、富士山に満月が沈むパール富士も見られますし、いいところに住めたと感謝していますよ。

(後略)

(2013年2月25日 神奈川県横須賀市 ギャラリー&スタジオ「秋谷 四季」にて 構成 小原田泰久)

著書の紹介

「湘南ちゃぶ台ライフ」
広田行正、広田千悦子 共著
(阪急コミュニケーションズ)

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