今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2022年9月「小原浩靖」さん

小原浩靖(おばら ひろやす)さん

テレビのCMを中心に企業プロモーションなどの映像広告を手がけ、作品数は700本を超える。2020年『日本人の忘れものフィリピンと中国の残留邦人』で劇場用ドキュメンタリーを初監督。第26回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞、第38回日本映画復興賞奨励賞を受賞。『原発をとめた裁判長そして原発をとめる農家たち』では、企画・製作も務めた。

『樋口理論プラス被災農家の復活劇で脱原発へ!』

原発が危険だという話だけでは 広がりがないと思った

中川:
監督の作品、『原発をとめた裁判長原発をとめる農家たち』を拝見しました。今は試写の段階で、9月から全国で上映が始まるそうですね。映画に登場する"原発をとめた裁判長"樋口英明さんには、この対談でも明快な理論で原発の危険性をお話していただきました。とてもわかりやすくて、たくさんの人に聞いてもらいたいと思っていましたので、映画化されるとお聞きしてとても楽しみにしていました。映画では、イラストやグラフを使って、樋口理論がよりわかりやすく説明されていましたね。それに、原発は危ないからやめようということだけではなく、被災された農民の方が自ら立ち上がって太陽光発電に取り組んでおられる姿が紹介されていました。これから、電力をどうすればいいか、ひとつの指針になると思いました。
小原:
ありがとうございます。会長は、樋口さんと対談をされて、この映画にも興味をもってくださるくらいですから、原発は危険だという考えをおもちなんですね。

中川:
真氣光の創設者である父は、氣の観点から見て、原爆はもとより原発に対しても反対だという立場でした。当時はソ連でしたが、チェルノブイリの被ばく者の治療に何度も足を運んでいましたし、被ばくした子どもたちを日本に呼んで静養させたりしました。アメリカインディアンのホピ族の村を訪ねて、原爆の原料になったウランの採掘に従事させられて体調を崩している人たちの治療もしました。そうした経験から、「ウランは利用時だけでなく、採掘から処分まで問題」だと考えていました。私も原発には疑問をもっていて、脱原発を訴える元スイス大使の村田光平先生や京都大学の原子炉実験所にお勤めだった小出裕章先生とも、この対談でいろいろお話をうかがいました。
小原:
そうでしたか。この雑誌を読んでくださっている方にも応援していただけそうでうれしいです。

中川:
原発問題には興味をもっている方たちが読んでくださっています。原発の危険性は多くの人がわかっていると思います。でも、原発を止めてしまって電力は大丈夫なのだろうかという心配もあるわけです。この映画は、みなさんが原発のことを知り、これからどうしたらいいかを考える上で、とても参考になると思います。樋口さんのお話でびっくりしたのは、原発の耐震性が普通の住宅より低いということです。確かに、原発の建屋は頑丈に作られているかもしれませんが、揺れで配管が壊れたら大事故につながる危険があるわけです。なのに、原発の建っているところには大きな地震はこないという、エッと驚くような前提で原発が作られてきたわけですよね。そういうことを知ることから始めないといけないと、映画を見ながら感じました。
小原:
樋口理論は、そのあたりのことがとてもわかりやすいですからねこの映画は、樋口さんの大飯原発訴訟の弁護団代表だった河合弘之弁護士から「樋口理論を映像化してYouTubeで流さないか」という提案を受けたことからスタートしました。昨年の2月ごろの話です。私はすぐに返事をしませんでした。と言うのも、原発は危険だとか、こういう被害があったという話だけだと、広がりという面では限界があるかなと思ったからです。YouTubeはたくさんの人が見てくれるというイメージがあるかもしれませんが、ぼくの感覚だと、せいぜい3万人くらいしか見てくれません。これまで、河合さんと一緒にYouTubeで原発関連の動画を流したことがありますが、3万回くらいの再生で終わっています。
中川:
YouTubeだと、原発に関心のある人しか見ないですからね。
小原:
そうなんですね。原発の危険性をよく知っている人しかアクセスしてくれないのではと危惧したわけです。

中川:
原発に関心のない人、CO2削減や電力不足がやかましく言われている中で再稼働は仕方ないかと思っているような人にも見てもらいたいですからね。問題意識を植え付けるということでしょうかね。

小原:
脱原発しないといけないと思っている人の数が、ぼくの感覚でいうと2017年くらいから伸びていないような気がするんですね。福島第一原発での事故の記憶が薄れている人もいるし、まあ大丈夫なんじゃないかという気持ちになった人もあると思うんですね。だから、原発の問題点ばかりをテーマにしても、これまでそういう映画を見たことのある人しか見てくれないのではと思いました。だから、すぐに「やりましょう」と言えなかったんです。
<後略>

東京・ 池袋のエスエーエス東京センターにて 構成/小原田泰久

原発をとめた裁判長そして原発をとめる農家たち

上映館(2022 年7 月時点)
・東京  ポレポレ東中野(9/10~)
・福島  フォーラム福島(10/7~)
・山形  フォーラム山形(10/7~)
・宮城  フォーラム仙台(10/7~)
・群馬  シネマテークたかさき
・長野  長野相生座・ロキシー
・神奈川 横浜シネマ・ジャック&ベティ
・静岡  シネマイーラ(11 月公開)
・愛知  名古屋シネマテーク
・京都  京都シネマ
・大阪  第七藝術劇場
・兵庫  元町映画館
・広島  福山駅前シネマモード
・広島  横川シネマ(10/14~)
・愛媛  シネマルナティック
・大分  別府ブルーバード劇場(9/16~)
・鹿児島 ガーデンズシネマ
・沖縄  シアタードーナツ(10月公開)
https://saibancho-movie.com

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