今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2016年9月 「李 久惟」さん

李 久惟(りー じょ)さん

1975年台湾高雄生まれ。2000年東京外語大卒。卒業後台湾新幹線プロジェクトに従事。専門は語学教育、歴史、比較文化、国際関係論、異文化コミュニケーション。拓殖大学客員教授。日本李登輝友の会理事。主な著書に『本当は語学が得意な日本人』(フォレスト出版、2013年)、『日本人に隠された《真実の台湾史》』(ヒカルランド、2015年)がある。

『本人の利他の心が世界を救うと信じています』

台湾と日本。地震が交互に起こり、お互いに助け合ってきた

中川:
はじめまして。李さんは、まわりからはジョーさんと呼ばれているそうなので、私もジョーさんと呼ばせていただきます。
ジョーさんが書かれた「日本人に隠された《真実の台湾史》」(ヒカルランド)という本を読ませていただいて、日本と台湾とがとても深い絆で結ばれていることがよくわかりました。特に、台湾の方々が、日本をとても大切にしてくれているのを知って、胸が熱くなりました。
2011年の東日本大震災でも、台湾は、世界からの義捐金の約3分の1に当たる200億円を寄付してくださいました。今年4月の熊本の震災でも、2月には台湾で地震があったばかりなのに、すぐに3億円もの義捐金を集めて、届けてくださいました。ありがたいことです。
今日は、ジョーさんに、台湾と日本の、あまり知られてないすばらしい関係についてお話ししていただこうと思います。ジョーさんは、15言語以上を自由に話せるマルチリンガルです。日本語もとてもお上手です。
李:
今日は、このような場を設けていただいてありがとうございます。
熊本の地震から何ヶ月もたっていますが、余震があったり、大雨があったりして、なかなか復旧が進んでいません。現地の方は、とてもつらい思いをしていると思います。心より、お見舞い申し上げたいと思います。私も、5月の終わりに、ボランティア活動で、友人と一緒に被災地をお訪ねしました。
地震の話をすると、台湾では1999年9月21日に、2000人以上が亡くなる大地震がありました。このとき、日本の救援隊が真っ先に駆け付けてくれましたし、義捐金もたくさん届けてくれました。台湾の人たちは、そのことにとても感謝しています。
ですから、2011年の東日本大震災でお返しをするのは当たり前のことでした。日本の人たちは、そのことにとても感謝してくださいました。
今年の2月には台湾南部で大地震がありました。このときには、日本が台湾を助けてくれました。そして、そのあとの熊本です。
私たち台湾人は、助け合いの精神をとても大切にしています。そして、それを教えてくれたのが日本人です。
中川:
地震でたくさんの方が被災して、悲しいこともいっぱいあったけれども、そこでさまざまな感動的なドラマも生まれました。ジョーさんのおっしゃるように、台湾と日本で交互に大地震が起こって、そのたびにお互いが助け合ったというのも、すばらしい話ですよね。ジョーさんからお聞きして、改めて、台湾と日本はいい関係なのだなと思いました。
李:
日本人には、伝統的に利他の精神があります。その精神が、かつてはアジア一の貧しい地域だった台湾を豊かにしてくれました。台湾の歴史の中で、それは奇跡的なことだったと思います。
そういう過去の事実を見直す中で、私は日本人の利他の心が世界を救うと考えるようになってきました。
中川:
そう言っていただけるのは、日本人としてとてもうれしいことです。でも、ジョーさんは、どういうことから、そう考えるようになったのでしょうか。歴史的な事実というのは、どういったことだったのでしょうか。
李:
大航海時代、スペインやオランダに統治されるまで、台湾には、先住民たちが30以上の部族に分かれて暮らしていました。部族同士は、言葉も違っていましたので、あまり交流もありませんでした。
ヨーロッパ人は、先住民を銃で脅してプランテーションを始めました。そのために、大陸南部から数千人の漢民族を連れてきました。先住民との混血が起こりました。八百万の神を信じる先住民にキリスト教を布教し、考え方にも変化が起こりました。このときを境に、台湾は大きく変わっていきました。
その後、清に支配され、中華的な台湾が作られていきます。清は、先住民の部族同士を戦わせるという分割統治というのをやりました。そのせいで、部族間の関係がとても悪くなりました。そして、1895年から50年間、日本が治めることになります。
私の曽祖父は、日本が統治する前と後をよく知っています。その違いを、私の祖父や父親に話して聞かせたそうです。祖父や祖母が若いころは、日本時代でした。日本が去った、戦後の台湾も知っています。
祖父は、こんなことをよく言っていました。「日本時代は、台湾にとって光が9割以上、闇が1割以下。比較して、オランダ時代、清国の時代、初期の国民党時代は、闇が9割、光がわずか1割だった」
私たちの世代は、学校で反日教育を受けました。しかし、祖父母が話してくれることと大きく違っているのです。どちらが本当だろうと混乱しました。
でも、日本時代がいかにすばらしかったかを語る祖父母の真剣な姿の方を、私は信じることができました。そして、冷静に当時の状況を考えたり、歴史の資料を調べていくうち、祖父母の言っていたことが本当だと確信するようになりました。

<後略>

(2016年7月26日 東京・日比谷公園の松本楼にて 構成/小原田泰久)

著書の紹介

台湾《日本語世代》がどうしても今に伝え遺したい 日本人に隠された《真実の台湾史》 韓国は「嫌日」なのに台湾はなぜここまで「親日」なのか? (Knock‐the‐Knowing)
李久惟(ジョー・リー)(著) 出版社:ヒカルランド

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