今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2023年5月「菅谷 晃子」さん

菅谷 晃子(すがや・あきこ)さん

千葉県生まれ。引き売り士、講演家、シンガー。小学校5年生からのいじめによりコンプレックスの塊となり、高校を中退する。仕事も続かず、23歳のときから豆腐の引き売りを行う。お客様との支え合いによって生きる楽しさを知る。いじめをなくし高齢者を支える活動はTVでも紹介されている。看取り士の資格も取得。著書『ありがとうは幸せの贈り物 あこのありが豆腐』(三冬社)

『トーフ― ♫  ラッパを吹いて笑顔と幸せを届ける』

「かわいそうだから」から「ありがとう」「助かるよ」へ

中川:
『あこのありが豆腐』(三冬社)という本を読ませてもらいました。わかりやすい文章と漫画でとても読みやすかったです。リヤカーを引いて豆腐を売っている女性と聞いて、どういう経緯でそんな仕事を始めたのだろうと興味をもって読んだのですが、子どものころからいじめられたりして、つらい思いをして、23歳でこの仕事に出あったそうですね。19年もやり続けている中で、さまざまなドラマがあったようで、今日は、そんなお話がお聞きできればと思っています。
あこ:
声をかけていただきありがとうございます。
中川:
名刺を拝見すると、引き売り士、講演家、シンガーとありますが、いろいろなことをやっておられるんですね。
あこ:
週に5日はリヤカーを引いて豆腐やお惣菜、お菓子などを販売しています。休みの水曜日と日曜日には、講演やライブ活動をしています。

中川:
今に至るまでに悲喜こもごもの物語があったようですが、大きな転機になったのは、フリーペーパーの求人広告だそうですね。
あこ:
小学校5年生のときからいじめにあい、人と話をすることがどんどん苦手になりました。中学生のときには、父親と血がつながっていないこともわかり、「私のことずっとだましていたんだ」と両親に嫌悪感をもち、家を飛び出したこともあります。高校も中退しました。 つらい学校生活から逃れて、やっと自分のやりたいことができると思って働き始めたのですが、もともとのんびりした性格なので、急かされたりすると失敗してしまいます。いくつか仕事を変わりましたが、どれもうまくいきません。何をやってもダメだということでコンプレックスの塊でした。 23歳のとき、何気なくフリーペーパーを見ていたら、そこに「腕よりも、心で販売できる人募集」という求人が目に飛び込んできました。「リヤカーを引いて街へ出て、ぬくもりのある仕事をしてみませんか?」という触れ込みにピンとくるものがあって、「私、腕なんて何もないけれど、心ならきっとある!」と思って、この仕事に飛び込んでみることにしました。
中川:
昔ながらの、ラッパを吹きながらリヤカーを引いて豆腐を売る仕事でしょ。人と話すのが苦手なのによく思い切りましたね。
あこ:
人と話すのは苦手だけどけっこう目立ちたがり屋なんです(笑)。 実際やってみると、見ず知らずの人に声をかけるのは怖かったし、戸惑いました。それでも、珍しさや懐かしさから、商店街のおじさんやおばさんが「がんばっているね」とほめてくれたり、みなさんニコニコしながらお豆腐やお惣菜を買ってくれてうれしかったです。 このころは、どうやったら売れるだろうと一生懸命に考えていて、まだ20代でしたから、かわいい仕草をするとおじさんたちが買ってくれたりしました(笑)。 でも、「かわいそうだから買ってあげるよ」とよく言われることがあって、それには反発を感じましたね。
中川:
一生懸命にがんばっているのだから、「かわいそう」と言われるとむっときますよね。
あこ:
そんなときに川澄さんというおじいさんに会いました。毎週火曜日にコインランドリーの前で待っていてくれて、商品を買ってくれて、帰り際には「あきちゃんありがとう。がんばれよ」と見送ってくれました。寒い冬にはカイロを束でくれたり、暑い夏には一緒にアイスを食べたりしました。 川澄さんのおかげで、毎週、いろいろなお客さんに会えるのが楽しみになって、お客さんのことが大好きになりました。そんな大好きなお客さんを喜ばせるにはどうしたらいいだろうと考えるようになりました。どれだけ売れるかから、どれだけ喜んでもらえるだろうに、考え方が変わりました。 そしたら、「かわいそうだから」と言う人はいなくなって、「ありがとう」とか「助かるよ」という感謝の言葉をいただけるようになって、私も心の底から笑顔が出せるようになりました。
中川:
打算的な付き合いから、心と心のかかわりができるようになったんでしょうね。自分が変わるとまわりが変わるとよく言いますからね。 お客さんはうれしいから「ありがとう」と言うし、あこさんも「ありがとう」と言われてうれしい。相互に「ありがとう」のやり取りがある。いい氣が行ったり来たりしていますね。いい関係ですよ。
あこ:
一週間だれともしゃべらないお年寄りも多くて、短い時間だけど、私と話すのを待ってくれている方もいます。喜んでもらえることがこんなにもうれしいなんて考えたこともなかったです。<後略>

足立区綾瀬 ふれあい貸し会議室 : 綾瀬Aにて 構成/小原田泰久

著書『ありがとうは幸せの贈り物 あこのありが豆腐』(三冬社)
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