今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2017年8月 「高安 和夫」さん

高安 和夫(たかやす かずお)さん

1965年千葉県生まれ。国学院大学卒業。2004年「銀座食学塾」を設立。代表世話人として2ヶ月に1度のシンポジウム、交流会を開催。2005年4月「銀座食学塾米作り隊」を結成。2006年3月28日に「銀座ミツバチプロジェクト」を立ち上げる。2008年「銀座農業塾」を開講。2010年には、銀座ミツバチプロジェクトが環境大臣表彰受賞。現在、一般社団法人トウヨウミツバチ協会代表理事。著書「銀座ミツバチ奮闘記」(清水弘文堂書房)。

『ミツバチが共に生きることの大切さを教えてくれる』

銀座を活性化させようと考えていたときにミツバチと出あう

中川:
月刊ハイゲンキ3月号の「行動派たちの新世紀」で取り上げさせていただいた「銀座ミツバチプロジェクト」、とても興味深く読みました。ミツバチに不思議な魅力を感じまして、もっとミツバチのこと、ミツバチから広がっている波紋についてお聞きしたくて今日はおうかがいしました。
さっき、銀座の松屋通りにある紙パルプ会館というビルの屋上を拝見しました。ミツバチの巣箱があって、たくさんのミツバチがぶんぶんと飛んでいました。
ハチというと刺されるというイメージがあったのですが、別に私たちがいることなど気にせず飛んでいましたね。
高安:
今日はありがとうございます。みなさん、ミツバチというと、最初は刺されるのではと警戒されますね。でも、きちんとミツバチの性格を知って、ルールを守っていれば刺されることはありません。ミツバチは、人を刺せば自分も死んでしまいますから、よほどのことがない限り人を刺したりはしません。こちら側が危害を与えようとすれば刺すこともありますけどね。
私たちは、銀座の真ん中にあるビルの屋上で養蜂をやって12年になりますが、街の皆さんが刺されたというのはほんの数回です。それも、刺されるには理由があって、何もしないのにハチが襲ってくることはありません。
ミツバチは高さ50メートルくらいのところから更に上昇したあと、蜜源である花に向かって飛んでいきます。人が行き交うところを飛び回ったりしませんので安心してください。
私たちに養蜂を教えてくれた先生は、「ミツバチは蜜を集めるのに一生懸命で、人のことなどかまっていられないよ」と笑っていました(笑)。
中川:
12年間、都会の中の都会とも言える銀座でミツバチを飼っていて問題が起きてないというのは説得力がありますね。銀座とミツバチというのは意外な組み合わせですよね。養蜂というと、農村とか山の中というイメージがありますからね。高安さんは、どんなことがきっかけで銀座で養蜂を始めたのですか。
高安:
私はもともと、茨城にある有機農法で米や野菜を生産して販売する会社に勤めていました。そのときに、都会のみなさんに、農業のことを理解してもらいたいと、銀座に営業所を作って、食や農の勉強会を紙パルプ会館の会議室を借りて開いていました。
勉強会にこられたみなさんに茨城へ来ていただいて農業体験をするということもやっていました。しかし、茨城まで米作りに連れていくのはとてもハードルが高いので、銀座で農業ができないだろうかと考えました。もちろん、銀座には田んぼも畑もありませんから、使うならビルの屋上だと思い、紙パルプ会館取締役の田中淳夫さんに、農産物を作るのに屋上を貸してくれないかとお願いしました。
そしたら、「街が活性化するなら貸してあげよう」ということで、先の見通しがあったわけではありませんでしたから、なにか銀座に合う農産物はないか必死で探しました。
中川:
最初は屋上で農業をやろうと思われたんですね。
高安:
イチゴがいいとか、メロンだとかマンゴーだとか、あれこれアイデアは出ました。でも、素人がやるわけですから、銀座の高級なお店で扱ってもらえるような高いクオリティは期待できません。いきなり壁にぶち当たりました。
さてどうしたものかと、あちこちにアンテナを伸ばしていたとき、皇居の近くにあるビルの屋上で養蜂をやっている藤原誠太さんという方に出会いました。話を聞くと銀座で養蜂というのはなかなか面白そうだし、実際にその方もたくさんのハチミツをとっていましたので、これはいけると思いました。最初は、藤原さんに屋上をお貸しして、養蜂をやってもらおうという腹づもりでした。しかし、スペース的に狭くて商売にならないというわけで、結局、私たちがやらなければならなくなってしまったという次第です(笑)。
最初は戸惑いましたが、ミツバチは何とも魅力的で、まわりの人に話しても、とても反応が良かったので、2006年に銀座ミツバチプロジェクトをスタートさせ、本格的に取り組むことにしました。
中川:
今考えると運命的な出会いですよね。それに、高安さんもよくやろうと決心しましたよね。感心します。ところで、銀座のミツバチはどこから蜜を集めてくるんですか。
高安:
ミツバチの行動範囲は2キロくらいです。銀座に巣箱を置くと、日比谷公園、皇居、浜離宮庭園まで飛んでいって、蜜を集めてきます。なかなか質のいい蜜を集めてきてくれて、初年度は3ヶ月くらいしかやりませんでしたが、巣箱3箱で160キロくらいとれました。これはすごくいい成績です。

<後略>

(2017年6月20日 東京都中央区立環境情報センターにて 構成/小原田泰久)

著書の紹介

「銀座ミツバチ奮闘記―都市と地域の絆づくり」 高安和夫 (著) 清水弘文堂書房

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