(45)耐えてこそ武士の妻(2)

<先週より続く>「話してくれてよかったですよ。」と私は言いました。彼女は話し続けます。「女に生まれたことを恨んでいるのではありません。勤めを全うできなかった事への申し訳ない思いだけなのです。私のような者はたくさんいる。なぜそうなってしまったのか。自分の運命を呪うしかない。命を繋げることが出来なかった女の悲しみ。なんと罪深きこと。なぜ私はこの世に生まれてきたのか。そのような運命(さだめ)を受け入れて耐え抜くしかできないのです。しかし耐えたところで…。」私 は、少しでも楽になってほしいと思い一生懸命に光を送りました。少しして「光は届きますか?」と聞いてみました。「少しだけ前を向くことができた気がします。もう過ぎてしまったことです。決して死ぬまで口にしまいと思っていましたが、死んでから口にしてしまいました。なぜ死ぬまで言わなかった事を死んでから言ってしまったのか…。」全てを自分の中だけに留めておくことは、とても苦しいものです。口に出来ることで、益々真氣光の光が届き楽になれるのです。「辛かった事、苦しかった事。確かに私は子を持つことができなかった。家を繋げなかった。しかし、子を持った多くの母親は、我が子を戦場に奪われていった。そのたくさんの悲しみがあったはずです。私はそれに気がつかなかった。そこには女としての別の悲しみがあったのです。ああなんと女は悲しいのでしょう。」自分の辛さを乗り越え、他の人にも目を向ける。私はなんて素晴らしいことだろうと思って聞いていました。「私にも何か出来ることがあるのでしょうか。ぜひ何かさせていただきたい。今までの事は過ぎた事です。ああ、心が晴れやかになり娘時代に戻ったようです。」みるみるうちに顔が変わっていきます。最期に彼女は言いました。「私に出来ることは何でしょう。私でもお役に立てることを、人として精一杯出来ることを…、何ができるでしょう。女としてではなく、他の人のために役に立てること、人として生きること。…。人として役に立てる、他の人を幸せにできる。そのために一生懸命生きること。女としての生き方に苦しむことなく…。それを皆が、わかってくれれば女としての悲しみを背負うことはない。人としての幸せ、周りの幸せ、それを信じて強く生きる心。わかりました。その事をお伝えすることですね。これは光なのでしょうか?この光をどうすれば…。この光とともに、私が行けば良いのですね。」昔から女には女の、男には男のたくさんの辛さや悲しみがあったことでしょう。私は心から、よろしくお願いしますという気持ちで彼女を見送ったのでした。