(1)「Tears in Heaven」

音 楽は人を楽しませたり、リラックスさせたり、時には落ち込んだ気持ちを元気にさせてくれたり、音・リズムそして詩を通して、素晴らしい氣を運んでくれます。今 週の月曜日、ニューヨークを離れる最後の日の朝食を、私たちはブロードウェイにあるリンカーンセンター近くのカフェで取りました。ベーグルにスクランブルエッグ、少しのフルーツとコーヒーというセットメニューを注文して席に座って待っていると、それまでの陽気な曲に代わり曲調の違うこの曲「Tears in Heaven 」(ティアズ イン ヘブン)が流れ出したのです。私は思わず聞き入りました。こ の曲はエリック・クラプトンが、‘91 年にニューヨークの高層アパートから4 歳の息子が誤って落ちて亡くなってしまった悲しみを歌ったものです。‘93 年に年間最優秀曲に選ばれ、この曲を収録した「アンプラグドUnplugged 」も最優秀アルバム賞を獲得しました。十年以上昔の話になりますが、私もCD を買ったり武道館での来日コンサートに行ったことを思い出します。Would you know my name If I saw you in heaven?(もし天国でお前に会ったら、お前は私の名を覚えてるだろうか)という歌詞で始まるのですが、息子と過ごす時間が少なく何もできなかったのではないかという後悔と、悲しみを乗り越えて前向きに生きようとする姿が伝わって来る曲です。タイトルの「Tears in Heaven 」はサビの部分に出てきます。Beyond the door,there’s peace I’m sure,and I knowthere’ll be no more tears in heaven.ドアの向こう、つまり、天国には、安らぎの世 界があり、そこでは、涙などあり得ない、と言っています。少 しスローダウンしたやさしい曲調に、私はこの曲が作られた背景と昨日までのセミ ナーのこと、そしていろいろな人達の笑顔を思い出していました。不思議な縁で会った人 達、日本に居たら到底会うことが無かった人達、宗教もルーツも違う人達。そこに繋がる たくさんの国々に及ぶ先祖。そんな事を考えていると曲はいつしか終わり、再びアップテンポの曲調に代わっていました。店内は何事もなかったかのように活気づいていて、気がつくと満席です。私以外の5 人は、クラプトンの曲が流れたことに気がついたのか、気がつかなかったのか、みんな特に気にも留めない様子で、「今日はjewish holiday (ユダヤ教の休日)だ」という話から、そのうちにホロコーストで犠牲になった人達の話に発展していったのでした。私が偶然のように聞いたクラプトンの曲は、真氣光の光とともに天国から見守ってくれているたくさんの人達からのプレゼントのように感じたのでした。