2024年5月「山元 加津子」さん
- 山元 加津子(やまもと・かつこ )さん
映画監督。石川県金沢市生まれ。富山大学理学部卒業。小松市在住。長く特別支援学校の教諭に勤務し、並行して、養護学校の子供達の理解を広く社会に知らせる活動を行ってきた。モナ森出版を立ち上げる。著書『たんぽぽの仲間たち』『宇宙の約束―私は、あなただったかも』『リト』『銀河鉄道の夜 イーハトーブの賢治さんへ』など多数。映画作品『銀河の雫』『しあわせの森』。
『すべてはいいことのために。サムシング・グレートの思い』
地震で被災しても みなさんやさしくて強くて感動した
- 中川:
- 山元加津子さんというよりも「かっこちゃん」という愛称で呼ばれていることが多いようなので、かっこちゃんで進めさせていただきますね。
調べてみたら、前回、かっこちゃんと対談したのは1999年でした。25年も前の話です。あのときは、石川県の小松市にあるかっこちゃんのご自宅にうかがってお話をお聞きしました。特別支援学校の先生をされていました。
読み直してみると、小さいころは魔女になりたかったとか、やくざの方と仲良くなった話とか、方向音痴ですぐに迷子になってしまうとか、障がいのあるお子さんたちからたくさんのことを学んだとか、ユニークですてきなお話をたくさんしていただきました。
その後、特別支援学校をお辞めになって、本を書いたり講演をしたりといった活動をなさっています。映画も作られています。多岐にわたる活動なので、何からお聞きすればいいか迷っているのですが、やっぱり地震のお話は聞きたいですね。元旦から大変だったですね。小松でもかなり揺れましたか。
- かっこ:
- がつんという音がしたと思ったらすごく揺れてびっくりしました。5年くらい前に、仲間たちが集まる場所として、小松の森の中にある築180年の古民家をリノベーションして「モナの森」という施設を作りました。私はそこにいました。
近所の家は壁にひびが張ったりして大変でしたが、モナの森は、太い梁があったりして、造りがしっかりしていたのか、何ともなかったし、本棚の本も一冊も落ちませんでした。 - 中川:
- 地震と言えば、東日本大震災のとき、私は仙台でセミナーをやっていました。あのときの激しい揺れは忘れられません。
新幹線も止まって東京へ帰れなくなったので、会場で一晩を過ごしましたが、まわりの人たちが、ご本人たちも大変なのに、おむすびや毛布を用意してくれたりして、本当に助けられました。
災害はない方がいいし、被災者の方は大変だったと思いますが、ああいうことがあって人の温かみを感じることもありますね。 - かっこ:
- みなさん、やさしくて強くて、私は感動しました。
ある財団の方から、能登の障がい者施設に寄附をしたいとのご連絡がありました。知り合いの施設に連絡をとったら、そこも被災しているのに、もっとひどいところがあるから、うちよりもそっちに寄附をしてあげてとおっしゃるんです。
あるドラッグストアでは、商品が棚から落ちたりして店内が大変な状態だったのに、お店を閉めないで、お金はあとでいいということで、販売を続けました。お店がないと困るだろうという心づかいだと思います。
お客さんも、みなさん、きちんと順番を守りますし、買い占めもしません。あんたのところは子どもがいっぱいいるからもっともっていっていいよとか、自分のことよりもほかの人を思いやっている姿はすてきでした。
金沢弁で「ありがとう」は「気の毒な」って言うんですね。野菜をお持ちすると「気の毒なね」って言われるんですよ。
それは、かわいそうという意味ではなくて、あなたがうれしいと私もうれしい、あなたが悲しいと私も悲しいという感じなんです。 とってもいい言葉だなと思っています。 - 中川:
- 人は一人では生きられないし、みんなで助け合わないと幸せにはなれません。相手の気持ちをわかろうとすることで、氣の交流が生まれて、お互いにエネルギーが高まっていくのではないでしょうか。 新しく作られた映画『しあわせの森』を拝見しました。人と人、人と自然とのつながりが大切だということがとてもよくわかりました。
宇宙には幸せになるプログラムがあって、動物も植物もみんなが幸せになれるはずだという、すてきなテーマですね。その根底には、筑波大学の教授をされていた村上和雄先生のおっしゃるサムシング・グレートの働きがあるということで、村上先生もとても重要な登場人物でした。
村上先生は、2021年4月にお亡くなりになりましたが、この対談にも2度出ていただきましたし、私どもの会社のホールで、スタッフや会員のみなさまに講演してくださったこともありました。 村上先生は、かっこちゃんなりのやり方、言葉でサムシング・グレートのことを伝えてほしいと言い残されたそうですね。 - かっこ:
- 私が特別支援学校の教員として子どもたちと一緒にいるとき感じたことと、先生がおっしゃっていることと、共通点がたくさんあって、自然に親しくお話をさせていただくことになり、たくさんのことを教えていただきました。
- 中川:
- 村上先生は遺伝子工学の世界的な権威でした。人は遺伝子を読み解くことができたけれども、いったいだれが遺伝子を書いたのだろうという疑問をもち、そこでサムシング・グレート、人知の及ばない偉大な力というのを考えないと説明がつかないと言われていました。
言われれば、確かにその通りです。遺伝子を読み解くことには一生懸命になっても、なかなかだれが書いたのだろうという疑問はもたないですよね。
2024年2月 26 日 東京・池袋 エスエーエス にて 構成/小原田泰久
- 山元加津子さんの著書『リト』
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