今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2023年4月「和合 治久」さん

和合 治久(わごう・はるひさ)さん

1950年生まれ。東京農工大学大学院修士課程修了後、京都大学にて理学博士号取得。埼玉医科大学教授を経て、現在、埼玉医科大学短期大学名誉教授、松本大学客員教授。免疫音楽医療学、腫瘍免疫学、アレルギー学、動物生体防御学などが専門。著書『免疫力を高めるアマデウスの魔法の音』(アチーブメント出版)『モーツァルトを聴けば免疫力が高まる』(ベストセラーズ)など多数。

『昆虫少年が免疫を研究し、音楽療法の草分けとなる』

未病の段階でブレーキをかけられないかと音楽に着目

中川:
和合先生のことは、内観の石井光あきら先生と中野節子先生からご紹介いただきました。ぜひお話をうかがいたいと、松本の先生のご自宅までお邪魔した次第です。石井先生は、長年私どもの真氣光研修講座の講師をやっていただいています。中野先生には本誌の昨年12月号の対談に出ていただきました。先生方とのお付き合いは長いのですか。 
和合:
いえいえ、まだ2年くらいじゃないでしょうか。私の本を読んでくださったかで、石井先生から連絡がありました。安曇野の内観研修所で初めてお会いして、私が音楽療法のことや「うちにはチョウチョがたくさん来るんですよ」といった話をしたら、ずいぶんと興味をもたれたようで、内観の研修があるたびに、お二人でここへ遊びに来てくださいます。
中川:
チョウチョの話もぜひ聞いてくださいと言われました。チョウチョのことは後程お聞きするとして、まずは音楽療法のお話をお聞かせください。 子どものころから音楽はお好きだったんでしょうね。 

和合:
好きでしたね。中学校のときはブラスバンド部でクラリネットを吹いていました。初代の部長を務めました。 今でも講演のたびに、ハーモニカを持って行って、ぼくの演奏で歌ってくださいと言っています。

中川:
音楽好きが高じて音楽療法の研究を始められたのですか。 
和合:
音楽は好きだったけれども、すぐに音楽療法にいったわけではありません。私の専門は免疫学です。25歳のときからずっと研究してきました。40歳近くになって、21世紀は未病との戦いの時代になると思いました。未病というのは、まだ発病していないけれども、何となく体に不調があるという状態です。検査では異常が見つからなくても、放っておいたらどんどん進んで、病院通い、あるいは入院することになってしまいます。そうなる前の未病の段階でブレーキをかけることはできないかと考えて、そのツールとして何かないかと探していたときに、音楽を聴くことで免疫力が上がればいいということで研究を始めたわけです。
中川:
最初から音楽ではなく、免疫の研究をしている中で、音楽の効果に気づかれたわけですね。今では音楽療法はよく知られていますが、30年以上前のことですから、なかなか理解してもらえなかったのではないでしょうか。
和合:
私が音楽療法を研究し始めたのが、1980年代後半です。その当時、日本では音楽を聴くと免疫力が上がると言っても、変人扱いですよ(笑)。「音楽で病気が治るはずがないよ」というのがほとんどの人の反応でしたね。 けれど、学会ではデータに基づくエビデンスを示して発表しているわけです。協力してくれた看護師や学生が証人としていますから、文句を言われることはありません。それでやっと着目されるようになりました。
中川:
ご自分でも音楽を聴くとリラックスしたりして免疫が上がるのではと感じるところがあったんでしょうね。
和合:
特にクラシック音楽だとリラックスできるという感覚はありました。医学的にも、アメリカでは1950年に北米音楽療法協会が立ち上がって患者さんに音楽を提供して疾病の回復に役立てるという活動が行われていました。でも、患者さんにどんな変化があるかという現象が残っているだけで、データはとられていませんでした。 このときにモーツァルトが使われていたという記録もあって、私はモーツァルトをモデルシステムにしてデータをとってみようと思いつきました。
中川:
未病というのも、当時としては新しい視点だったと思います。
和合:
中国に長春中医薬大学というのがあって、当時、私はその大学の客員教授をやっていました。中国は一人っ子政策でしたから、一人っ子同士が結婚して4人の親の面倒を見ないといけないわけです。親が病気になったら大きな負担になります。だから、未病の段階で対処するということがとても注目されていました。2100年くらい前の後漢の時代では、未病を治療できるドクターが聖人でした。「黄帝内経」という医学書に記されています。中国では、昔から未病への関心が高かったんですね。 私は日本でも同じだと思いました。発病してからでは患者さんも家族も大変です。発病する前に対処することの大切さを感じて、未病対策を考え始めました。今は、未病克服が言われるようになりましたが、あのころは未病という言葉も知られてなかったですね。
中川:
国民医療費は40兆円を超えているそうですし、未病対策はもっともっと広がらないといけないと思います。
和合:
健康保険制度が破綻し、年金も当てにできない。病気になってなんかいられませんよ。音楽は身近で安価で副作用がないじゃないですか。感動もあって継続が可能。それで免疫力が上がるわけです。最高のツールです。<後略>

長野県松本市の和合先生のご自宅にて  構成/小原田泰久

免疫力を高めるアマデウスの魔法の音(CD付)
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