今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2022年3月「ジョー奥田」さん

ジョー 奥田(じょー おくだ)さん

1954年大阪市生まれ。大阪歯科大学を卒業し歯科医師免許取得。1980年渡米。ロサンゼルスで活動開始。1998年自然音楽家として活動を始める。2013年拠点をハワイ島に移す。世界各地の自然音を録音し、ストーリー性豊かな、新しい自然の音の世界をクリエイトする。2021年日本に戻り、歯科医として医療の分野から自然音による癒しを追求する。

『自然の音は神様が作った。だから常に完璧で美しい』

歯科の国家試験に受かったのに、音楽の道を志した

中川:
ジョーさんは自然の音を録音するお仕事をされていて、CDもたくさん出されています。私も何年か前にダウンロードして、疲れたときにはよく聴いています。 聴いているうちに眠くなってきます。体も心もリラックスするのだと思います。 まるで実際にその場にいるような臨場感のある音ですね。
ジョー:
ありがとうございます。「バイノーラルマイク」という特殊なマイクで録音しています。人間の頭の形をしていて、表面も音の反射の具合が人間の皮膚と同じように作られています。精密なゴムの耳がついていて、鼓膜の位置にある高感度のマイクで音を拾いますので、人間の聴覚を正確に再現することができます。 あたかも自然の中に自分がいるかのように聴こえるというのが、私の作品のベースになっています。 屋久島の森や奄美大島の森を体験しようとしてもなかなかできないじゃないですか。肉体的な条件、年齢的な条件で、行きたくても行けない人にも、屋久島や奄美大島やハワイの森の音を体験していただきたいというのがもともとの出発点です。
中川:
プロフィールを拝見すると歯科大学を卒業されているのですが、どうして歯医者さんにならずに自然音楽家の道に進まれたのでしょうか。とても興味深いですね。
ジョー:
歯科大学を卒業して、国家試験を受けて合格したのですが、歯科医にならずに、すぐにアメリカへ渡って音楽の道に進みました。それが1980年ですから約40年前です。 ロスで25年ほど活動し、東京に戻って10年、その後ハワイ島で暮らしていました。2021年11月に東京へ帰ってきました。そして、ある歯科クリニックで仕事を始めました。67歳の新人歯科医です(笑)。
中川:
大変なチャレンジだと思います。国家試験まで合格していたのに音楽の道ですか。よほど音楽が好きだったんですね。
ジョー:
そうですね。大学6年生になると、病院で1年間診療実習があって、その後半に国家試験の勉強をするわけです。国家試験は医大生、歯科大生にとっては一生を左右することですから、私もご飯を食べるとき、寝るとき以外はずっと勉強をしていました。 試験勉強中は合格することだけしか頭にありませんでしたから、自分の将来について考えることはあまりありませんでした。 しかし、試験が終わって発表があるまでに2カ月くらい時間があります。そのときに自分のこれから先の人生についてじっくりと考えました。このまま歯科医になって後悔はないのかと自分の思いを突き詰めていくうちに、どんどん音楽への思いが膨れ上がってきました。 国家試験の発表があって、歯科医の免許がもらえて、ほっとしたのも束の間、やっぱり音楽の道に進もうと決めました。 親はすごく怒っていました(笑)。
中川:
そりゃ怒りますよね。せっかく国家試験に受かったのに歯医者さんにならずに音楽の道ですからね。それもアメリカへ行くわけですよね。
ジョー:
でも、歯科大学で勉強したことは無駄にはなってないと自分では思っています。自然の音を扱うようになって、自分が学んできた医療のベーシックな知識とか、人間との向き合い方がとても役に立っています。 今回、日本に戻ってきて歯科医になろうと思ったのも、今までアーティストというアングルで表現してきたことを、今度は医療者という違った立場で伝えていければと考えてのことです。 自然の音は世界で一番美しいと思います。完璧だからこそ美しい。完璧な音は、人間の肉体にも精神にも、いろいろないい作用をもたらせるはずです。そこにアプローチできれば、医療者としても貢献できるのではないでしょうか。
中川:
自然の音を録ろうと思ったきっかけがあるかと思うのですが。
ジョー:
あるとき、レコード会社から自然の音を録音してほしいと依頼されました。やったことがなかったので試行錯誤しながらやっと録音ができて、ある日、ロスのスタジオで夜中に自分の録った自然の音を聴きました。ものすごくショックを受けました。感動するほど美しかったのです。パーフェクトな美しさでした。 なぜこんなにも美しいのだろう? と考えました。答えはすぐに出ました。神が作った音だから完璧なのです。美しいのです。 人間は音楽や絵画、彫刻など芸術作品を作るとき、完璧を目指すけれどもとても完璧には到達できません。完璧ではないところが人間の美しさであり良さだと思いますが、自然の音は非の打ちどころがありません。人間にはできないことを自然はやってのけていることにすごさを感じました。 そのことがきっかけで、神が作った音の完璧さを意識することができるようになりました。自分のこれまでの録音や編集といった経験、感性を全部注いで作品として自然の音の美しさを伝えたいという思いが湧き上がってきたのです。

<後略>

東京・池袋のSAS東京センターにて 構成/小原田泰久

CD:Tokyo-Forest-24Hours

ジョー奥田

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