今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2020年6月「帯津 良一」さん

帯津 良一(おびつ・りょういち)さん

1936年(昭和11年)埼玉県生まれ。東京大学医学部卒業後、東京大学第三外科、都立駒込病院をへて、1982年(昭和57年)に帯津三敬病院を設立。人間まるごとを対象とするホリスティック医学の確立に情熱を注ぐ。帯津三敬病院名誉院長。200冊を超える著書がある。最新刊は『ボケないヒント』(祥伝社黄金文庫)。

『ウイルスを排除することばかり考えず共存の道を探る』

新型コロナウイルスはちょっと騒ぎ過ぎの感がある

中川:
先生とお会いするのは4年ぶりですが、お元気そうで何よりです。
今年に入ってのコロナ騒ぎ、先生も影響を受けていると思いますが。
帯津:
患者さんがガタッと減りました。池袋のクリニックだと、毎日30人くらいの患者さんを診察していましたが、今日は10分の1の3人ですよ。みなさん、新型コロナウイルスに感染するのが怖くて外出を自粛していて、ホメオパシーや漢方薬を送ってくださいという連絡が相次いでいます。
それから、土日は講演で埋まっていたのですが、すべて秋以降に延期になりました。
中川:
私も土日は地方へ行くことが多かったのですが、東京から行くとみなさん不安がるので、今は自宅とか会社からネットで情報を発信しています。
先生も、こんなに自分の時間があることは珍しいと思いますが、どうされているのですか?
帯津:
私はもっぱら原稿を書いています。たくさん頼まれるのですが、普段は診療をしていますからなかなか進みません。出版社の人にはずいぶんと迷惑をかけているので、この機会に集中して書いています。
中川:
先生は今回の新型コロナ、どのように見ておられますか。
帯津:
油断はできませんが、ちょっと騒ぎすぎのような気もしますね。
私はあまりテレビを見ないし、新聞も読みません。でも、世の中で起こっていることにうと過ぎてもまずいので、早朝のNHKニュースだけは15分ほどですが見ています。今はコロナウイルスのことばかりですが、以前から嘆かわしいニュースばかりで、憤りを感じたり、気持ちが沈んだりしました。あまりネガティブな情報は入れないほうがいいですね。15分くらいのニュースがちょうどいいんじゃないでしょうか。気持ちが落ち込むと免疫力も下がりますから。
中川:
私もそう思います。テレビの報道など見ていると気が滅入ってきます。感染したらどうしようとか、外出すると移るんじゃないかとか、どんどん不安になります。不安は氣のレベルを下げますから、余計に感染しやすくなります。不安が大きくなると眠れなくなるとか、感染してないのに熱が出ることもあります。それで余計に心配になるという悪循環にはまり込んでしまいます。
そういう方にはしっかりと氣を受けてくださいとお話しています。
帯津:
毎日、何人が感染して、何人亡くなったと発表されますよね。亡くなられた方は本当にお気の毒ですが、これも不安をあおってしまいますね。
私の専門のがんですが、年間100万人以上の人が罹り 患かんします。死亡者は38万人くらいいます。一日当たりにすると、2800人くらいががんと診断され、1000人以上が亡くなっているわけです。
もし、テレビで毎日、今日のがんの罹患者数は3000人で1000人が亡くなりましたと発表したら、みなさんどう思うでしょうね。東京都は何人、大阪府は何人とか。不安と恐怖で大変なことになるのではないでしょうか。
インフルエンザでも毎年3000人以上が亡くなります。流行するのが冬場の3ヶ月だとして、それでも毎日30人以上が亡くなる計算になります。
毎日、これだけの人が亡くなりましたと言われたら怖くなりますよ。
新型コロナウイルスは未知のウイルスですから、慎重になって警戒を促すのも大切ですが、かからない人もいるし、治った人もいるし、軽症の人もいるといったことも、もっと報道しないといけないと思いますよ。
中川:
先生は毎月、「生きるも死ぬもあるがまま」という記事を書いてくださっていますが、いつも「なるほど」と思いながら読ませてもらっています。インフルエンザが流行しているときでも先生はマスクをしないそうですね。
帯津:
SARSが流行ったときでしたか、とてもお世話になった中国の方が亡くなりました。お葬式にはどうしても出たかったので、「これから中国へ行く」と言ったら、「こんな時期に行くことはないでしょう」と、みんなが反対しました。しかし、事情が事情ですから、次の機会にというわけにはいきません。「呼吸法をやっているから2日や3日は呼吸しなくて大丈夫だ」と言って反対を押し切りましたが、マスクを山ほどもたされました。中国へ着いてもマスクはしませんでした(笑)。
私は病院の医師にも看護師にも事務の人にも、「医療は格闘技なのだからマスクなんぞしていてはダメだ」と言ってきました。コロナの場合は、感染力が強い可能性もあるので、全面的にマスクを否定しませんが、あくまでも気持ちとして、どんな細菌でもウイルスでもかかってこいというくらいの迫力が必要です。医療者は感染予防には細心の注意をしつつ、気持ちの上では、立ち向かってほしいですね。医者が感染を怖がっておどおどしていては医療は成り立ちません。

<後略>

2020年4月22日 東京池袋・帯津三敬塾クリニックと神田・うなぎ久保田にて  構成/小原田泰久

著書の紹介

「ボケないヒント 認知症予防、わかってきたことこれからわかること」(帯津良一著) 祥伝社黄金文庫

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