今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2019年4月「シーラ・クリフ」さん

シーラ・クリフ(しーら くりふ)さん

1961年イギリス生まれ。リーズ大学大学院博士課程修了。1985年来日。埼玉大学、立教大学の非常勤講師をへて、十文字学園女子大学教授。大学では、英語と着物文化を教えるかたわら、国内外で着物展覧会やファッションショーを企画・プロデュースしている。著書に「日本のことを英語で話そう」(中経出版)「シーラの着物スタイル」(東海教育研究所)などがある。

『着物は日本人が誇るべき伝統。もっと気軽に着ればいい』

着物を初めて見て、絹の光沢、しなやかさ、色、柄に心を奪われた

中川:
私はFM西東京で「今日も一日、い氣い氣ラジオ」という番組をもっているのですが、そのラジオ局で社長を務められていた有賀達郎さんから、すてきな方がいるとご紹介されました。シーラ先生は、十文字学園女子大学の教授ということですが、何を教えられているのですか?
クリフ:
英語と着物文化ですね。講義以外に、ワークショップとして、着物の着付けやファッションショーなどもやっています。
中川:
今日もすてきな着物姿ですが、いつも着物を着ておられるのですか。
クリフ:
いつも着物ですね。洋服は、近くのお店に買い物に行くときとか、庭仕事をするときくらいかな(笑)。
中川:
イギリスのご出身で、学生時代に日本へ遊びに来たときに着物と出合い、すっかり魅せられたということですが。
クリフ:
24歳のときに友人に誘われて日本へ来て、陶器に興味があったので骨董市に連れて行ってもらいました。そしたら、あるお店にきれいな着物が飾られているのが目に入り、それがきっかけで着物のことが大好きになりました。そのときに買ったのが赤い長襦袢。友人に「それは着物じゃなくて下着だよ」と言われて、こんなにきれいなものを中に着るんだとびっくりしました。
あれからもう30年以上になりますが、ずっと日本で着物を着て暮らしています(笑)。
中川:
もともとファッションには興味があったようですね。
クリフ:
私は双子だったので、小さいころ、いつも妹と同じ洋服を着せられていました。私は金髪、妹は茶色の髪の毛で、顔も違っているのに、同じ洋服を着ているので、よく名前を間違われました。それが嫌で、妹とは違う洋服を着るようになりました。
誕生日もいつも2人一緒で、ケーキも2人でひとつ。そういう扱いがとても不満でしたから、自分は自分だというメッセージを、ファッションをとおして出していきたいと思ったのかもしれません。
中川:
日本で最初に着物を買ったとき、予算をオーバーしてしまって、もやしをずっと食べていたとお聞きしましたが。
クリフ:
そうそう。新宿の大きなデパートで買ったのですが、私は値札に書かれている金額でいいと思っていました。ところが、あれは生地だけの値段で、そこに仕立て代、八掛、長襦袢なんかが加わって倍以上の金額になってしまいました。まだ日本へ来たばかりで、どうやって断ればいいかわからなくて、代金を支払うためには食事を節約しないといけないので、毎日、もやしばかりを食べていました(笑)。
中川:
倍以上ですか。普通、すぐに着られる状態で売っていると思いますからね。シーラ先生は着物のどこにそれほど魅かれたのですか?
クリフ:
初めて着物を目にしたとき、絹の光沢、しなやかさ、それに伝統的な技法を駆使したデザイン性豊かな模様や柄。一瞬のうちに心を奪われてしまいました。
着物には、たくさんの色や柄があって、季節に合ったものが着られるじゃないですか。
正月には南天柄の着物、雪の柄もあるし、梅が咲くときには梅の柄、桜の季節だからピンクにしようかとか、どんな色や柄の着物にするか選ぶのが楽しいですよ。
今は洋服に色と柄がなくなりました。世界中がそうなってしまいました。大学の教室を見ても、グレーか紺かベージュかグリーンの無地が多いですよ。柄があっても、チェックか縞、それが2~3人いるくらいです。
今は洋服を大量に作って安く販売しますから、どうしてもそうなってしまうんでしょうね。それに、世界的に民族衣装がなくなり、その分、色や柄も少なくなってしまいました。
中川:
着物を着る人も少なくなっているんでしょうね。
クリフ:
いえ、増えていると思いますよ。私がこの大学で働き始めたころは、卒業式は全員がスーツ姿でした。今は99%が袴です。成人式でも着物が圧倒的に多いでしょ。
中川:
今はレンタルできますからね。
クリフ:
レンタルが多いですね。私はもっぱら古着屋さんで買います。私の講座を受けてくれている学生でベトナムから来ている子がいます。彼女にとってはレンタルでも高いんですね。だから、古着屋さんへ連れて行って、安い着物を見つけました。安いけれども、物はすごくいいんですよ。袴も探して、彼女はそれを着て卒業式に出ます。
卒業したら、その着物をもってベトナムに帰れば、いいお土産になります。日本の文化もあちらの人に知ってもらえますし。

<後略>

2019年2月8日 埼玉県新座市の十文字学園女子大学にて 構成/小原田泰久

著書の紹介

SHEILA KIMONO STYLE「シーラの着物スタイル」
シーラ・クリフ 著 (東海教育研究所)

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