今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2016年10月 「鶴田 能史」さん

鶴田 能史(つるた たかふみ)さん

1981年千葉県君津市生まれ。文化服装学院デザイン専攻を卒業。㈱ヒロココシノに入社。コシノヒロコに師事する。2015年1月テンボデザイン事務所を設立。3月には、東京コレクションに初参加。障がい者のモデルを起用する。10月の東京コレクションでは、平和へのメッセージを発表し、国内外で注目された。

『すべての人が分け隔てなくおしゃれを楽しめる世の中に』

平和をテーマに思い切った演出で話題になった2015年のショー

中川:
今回は、ファッションという、この対談では、これまであまりご縁がなかった業界の、鶴田能史さんにお話をうかがいます。ファッションデザイナーというお仕事をされているわけですが、ただのおしゃれではなくて、社会性の高い活動をされていることにとても興味を持ちました。
今は、10月19日に行われる大きなファッションショーの準備でお忙しい中、時間をとっていただきました。よろしくお願いします。
鶴田:
こちらこそ、よろしくお願いします。私のやっていることは、人と違い過ぎるので、「なぜ、ファッションデザイナーがそんなことをするの?」という反応が多いのですが、会長には興味をもっていただけて、とても光栄です。
中川:
10月に参加される「東京コレクション」は、ファッションに興味のある人ならだれでも知っているような大きなショーだそうですね。
鶴田:
ファッションショーは、パリコレクション(パリコレ)、ロンドンコレクション、ミラノコレクション、ニューヨークコレクションを、世界4大コレクションと言いますが、東京はそれに次ぐ位置づけです。東京コレクションで注目されて、世界に羽ばたいていったブランドはたくさんあります。
それだけに、実績のあるブランドしか参加できませんが、うちは「テンボ」というブランドを立ち上げて1年も立たないうちに、東京コレクションデビューを果たしました。
中川:
2015年は、世界に衝撃を与えるようなショーだったとお聞きしていますが。
鶴田:
「世の中全ての人へ」というのがうちのコンセプトで、障がいの有無や年齢、国籍を問わずに、ありとあらゆる人に、ファッションを届けていきたいと考えています。平和や人権についても、踏み込んだメッセージを出していますので、自ずと、ほかのブランドとは内容が違ってきます。
プロのファッションモデルだけでなくて、一般の人もモデルとして使っていますし、車椅子の人、重度障がいの人、目の不自由な人にも、おしゃれをしてもらって、ショーに出てもらっています。
中川:
去年は、「平和」をテーマに、思い切った演出をされたそうですね。
鶴田:
去年は戦後70年という区切りでしたから、ファッションショーを通して、恒久平和を願う思いを伝えたいと思いました。
オープニングでは、原爆投下の映像をバックに、アメリカをイメージできる服を着た2人の男性が登場しました。小柄な人と太った男性。広島に落とされた原爆はリトルボーイ、長崎に落とされた原爆はファットマンと呼ばれていたので、そんな組み合わせにしました。
そのあと、プロのモデル、一般の人、障がいのある人、重病の人・・・いろいろな人が着飾ってランウェイと呼ばれている舞台を歩きました。そして、最後に、1万羽の折鶴で作ったドレスを着た黒人の女性が登場しました。原爆の子の像に捧げられた折鶴をいただいて作ったものです。そこには、原発の問題も含めて、核のない平和な世界への願い、そして、人種差別をなくしたいという思いを込めています。
中川:
きっと、ファッションショーとしては前代未聞だったのではないでしょうか。反響はいかがでしたか?
鶴田:
うちのショーは、観客席の一番前に、車椅子が並びます。そんなファッションショーはないですよ。健常とか障がいとか関係なく、みなさん、感動してくださって、涙を流しながら見てくださっていた方もいます。
マスコミでは、いくつもの新聞が大きく取り上げてくれました。日刊スポーツという新聞では、全面を使って紹介してくれました。自分としては当たり前のことをやっているのですが、だれもやる人がいなかったので、すごい話題になりましたね。障がい者にスポットを当てるデザイナーが一流の舞台に現れたと、海外でも高く評価されました。

<後略>

(2016年8月23日 東京・武蔵野市のテンボデザイン事務所にて 構成/小原田泰久)

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