2015年3月 「荻久保 則男」さん
- 荻久保 則男(おぎくぼ のりお)さん
1966年長野県生まれ。15歳から、フィルムの8mmカメラで自主映画制作を始める。20歳から、フリーの映像スタッフ(照明、録音、撮影)として、たくさんのテレビのドキュメンタリー番組、劇映画に関わってきた。白鳥哲監督のドキュメンタリー映画「不食の時代~愛と慈悲の少食~」「祈り~サムシンググレートの対話~」の撮影を担当。「かみさまとのやくそく」が、初の劇場用映画監督作品。映画「かみさまとのやくそく」の自主上映、上映の情報に関しては、ホームページ http://norio-ogikubo.info/でご確認ください。
『どこから来てどこへ行くのか。胎内記憶から見えてくる魂の旅路』
公共の電波では扱えないけれども大切だと思えるテーマに取り組みたい
- 中川:
- 荻久保監督の作られたドキュメンタリー映画「かみさまとのやくそく」を、先日、拝見しました。親子の関係、あるいは命に対する見方について考えさせられる、すばらしい映画でした。今日は、どんなお話が聞けるのか、楽しみにしてきました。よろしくお願いします。
- 荻久保:
- ありがとうございます。私も、会長から氣のことをうかがおうと、楽しみにして来ました。
- 中川:
- 荻久保監督は、長年、照明とか音声とか、映画を陰で支えるような仕事をされていたそうですね。
- 荻久保:
- 映画が好きで、学生時代には映画研究会に入って、映画作りをしていました。その当時は、8ミリで撮っていて、今のビデオみたいに性能が良くありませんでしたから、照明の良し悪しが、映画の出来具合に大きな影響を与えました。いい映画を撮るには照明の技術を勉強しないといけなかったのです。それで、ピンク映画の照明の助手をすることになったのが始まりですね。
- 中川:
- 私たち映画を見る側にとっては、照明の仕事というのはほとんど意識しないわけですが、照明の仕事の難しさというのはどういうところですか。
- 荻久保:
- 光の当て具合で、映画の雰囲気ががらっと変わってしまいます。だから、映画の内容、ジャンルによって、照明はいろいろと工夫をしないといけないのです。私の場合、実際に映画制作の現場に入ってみて、自分にはドラマよりもドキュメンタリーの方が性に合っていると思いました。
- 中川:
- ドラマとドキュメンタリーとでは違うんですね。
- 荻久保:
- 違いますね。ドラマの照明は、主役を際立たせるのが大切ですが、ドキュメンタリーの照明になると、出演者の方があまり緊張しないようにしないといけませんし、普段の状態がうまく出せるようにすることも重要です。見ている人にも、照明を当てて撮っているとわからないようにしたいというのもありますね。なるべく、自然な姿が撮れるようにというのがドキュメンタリーの照明の役割です。ときには、照明を当てない方がいいと思うときもあって、そんなときは、照明を使わないことを監督にすすめます。
- 中川:
- なるほど。そういうお話をお聞きすると、ちょっと映画の見方が変わってきますね。
- 荻久保:
- でも、今はビデオカメラの性能が良くなっていますので、あまり照明に神経を使うことはなくなりました。ドキュメンタリーだと、照明よりも音声ですね。極端なことを言えば、顔がピンボケでも、音声がきちんと録れていれば、ドキュメンタリー映画の場合、そのカットは成立します。
- 中川:
- ところで、今回撮られた「かみさまとのやくそく」ですが、胎内記憶という、生まれる前の記憶をテーマにされています。以前には、白鳥哲監督の「祈り~サムシンググレートとの対話~」という映画の撮影を担当されていますが、一般的に言えば、非科学的とされるものを扱っていますよね。
- 荻久保:
- 白鳥監督からは、テレビのような公共の電波では取り扱えないけれども、とても大事なテーマだということで、祈りについての映画を作りたいとオファーをいただきました。というのも、監督自身が脳腫瘍におかされて、死を覚悟していた時期がありました。映画に出た子どもたちが祈ってくれたことで、監督は難病を克服することができました。打ち合わせのときに声も出せなくて筆談で話していた監督が、祈りによって回復していくのを、そばで見ていましたから、そういう不思議な力があるということは、私もよくわかっています。アメリカロケでも、がん患者さんのまわりを何人もの方で囲んで祈っている場面にでくわしました。見えないけれども、そこには何かすごい力が宿っているなというのを実感しました。
この映画は、震災で制作が一時ストップしましたが、被災地ロケから撮影が再開しました。それまでは、祈りというと宗教的なものと見られていましたが、震災があったことで、もっと日常的な行為なんだと多くの人が感じ、実際に祈る姿も報道などで目にする機会も増え、この映画も予想以上に受け入れてもらえました。 - 中川:
- 私たちは、目に見えないエネルギーを氣と呼んでいるのですが、祈りも氣だろうと思います。氣は、大きくプラスの氣とマイナスの氣に分けられます。祈りは、プラスの氣の代表的なものだと思います。
<後略>
(2014年12月22日 東京都渋谷区内の喫茶室にて 構成 小原田泰久)
- 劇場用映画の紹介
「かみさまとのやくそく」〜胎内記憶を語る子どもたち〜
制作・撮影・編集・監督:荻久保則男 2013年/日本映画/114分/カラー
上映情報は、ホームページ http://norio-ogikubo.info/ でご確認ください。