今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2007年11月 「外崎 肇一」さん

外崎 肇一(とのさきけいいち(とのさき けいいち)さん

理学博士。1945年栃木県生まれ。東京教育大学理学部生物学科動物学卒。同大学院博士課程修了。朝日大学歯学部教授、岐阜大学農学部獣医学科教授、岐阜大学大学控教授などを経て、2002年から明海大学教授。嗅覚と味覚の生理学が専門。著書に「がんはにおいでわかる」(光文社)「においと香りの正体」(青春出版社)などがある。

『夢はにおいのわかるロボットを作ること』

においなんか研究するのは頭の悪い証拠

中川:
はじめまして。においのことを研究されている先生がおられるというので、ぜひお会いしてお話をうかがってみたいと、そう思っておうかがいしました。
今日は、よろしくお願いします。
外崎:
こちらこそ、興味をもっていただきましてありがとうございます。台風の中、大変だったでしょう。私も氣功について、いろいろとうかがえればと思います。7〜8年ほど前ですが、私が岐阜大学にいたころ、私の講座の講師がガンになりました。そしたら、女子学生が氣功で治すんだと講習会に行っていました。ひょっとして会長のところへ習いに行ったんじゃないかなあ。残念ながら、その講師は亡くなってしまいましたが。会長は、もともとは工学部だったそうですね。どんな分野を専門にされていたんですか。
中川:
私は、電機メーカーで、マイクロマシンの研究をしていました。
外崎:
最先端じゃないですか。それがなんで氣功をやられるようになったんですか?
中川:
私どもの氣功は真氣光と言って、私の父が始めたものです。私は、また変なことをはじめたと、最初は冷かな目で見ていました(笑)。技術者ですから、氣のような目に見えないものは信じなかったんですね。でも、ストレスで胃を壊して、父がやっている氣功を受けましたら、胃が良くなったんですね。それで、氣功に興味をもって、父の手伝いをするようになりました。1995年に父が急に亡くなって、まだ氣のこともよくわからないうちに跡を継ぐことになりました。それからもう12年ですか。氣のことはいまだによくわからないですけど(笑)。先生は、においの研究をどうして始められたんですか?
外崎:
高校時代、理論物理をやりたいと思っていました。でも、あの学問をやるのは頭のいい人ばっかりなので(笑)、実験物理にしようと決めていたんですね。そのころ、『2001年宇宙の旅』という映画があって、そこでハルというスーパーコンピューターが出てきます。この映画に、きれいなバラの花が出てきたけれど、ハルがそのバラの花のにおいを感じている様子はまったくなかった。そう言えば、鉄腕アトムという漫画でも、アトムがお茶の水博士に、自分も涙を流せるようになりたいと言う場面はあっても、においを感じるようになりたいとは言わなかったなと思ったわけです。どうしてにおいを感じるようにしてほしいとアトムは言わなかったのだろうというのが疑問になって、それならにおいのわかるロボットを作りたい、ロボットに鼻をつけてやろうと、そんなことを決心したわけです。いろいろ調べると、東京教育大学ににおいを研究している先生がいることがわかりました。それで、東京教育大学を第一志望にしました。それがにおいを研究するきっかけですね。
中川:
においを感じるロボットですか。人間には五感というのがありますよね。視覚とか聴覚とか。嗅覚というのは、あまり研究が進んでいないし、研究者も少ないと聞いていますが、そういう分野を専門にするのはけっこう大変なことじゃないですか。
外崎:
アメリカに留学していたとき、偉い先生に言われました。においなんか研究するのは頭の悪い証拠だって(笑)。視覚とか聴覚というのは、そのもととなる光や音の物理化学的性質はよくわかっているわけです。でも、においや味については、ぜんぜんわかっていない。そんなわけのわからない分野を研究するのは生理学研究者としては賢い選択ではないということだったと思います。本当にその通りで、今でもにおいの本質についてはまったくわかっていません。
中川:
氣というのは、あるかどうかわからない。だから、科学の対象にならないとされてきたと思います。でも、においというのは、間違いなくあるものですよね。それでも、科学的に検証されていないわけですね。わかりにくいからという理由で、そんなものを研究するのは頭が悪いというのも、わからないものを明らかにするのが科学の醍醐味だと思うのですが、変な話ですよね。

<後略>

(2007年9月6日 埼玉県坂戸市、明海大学にて 構成 小原田泰久)

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